有価証券偽造罪

有価証券偽造罪とは

有価証券偽造罪は、刑法に規定された犯罪の一つであり、広義には刑法第18章「有価証券偽造の罪」に規定される全ての犯罪を指します。具体的には、有価証券を偽造、変造、または行使する目的で虚偽の記入を行う行為が処罰の対象となります。この罪は、社会的な法益に対する罪に分類され、保護される法益は有価証券に対する公衆の信頼です。

関連する犯罪

有価証券偽造等罪の他に、以下の罪が関連します。

偽造有価証券行使等罪
支払用カード電磁的記録に関する罪
支払用カード電磁的記録不正作出等罪
不正電磁的記録カード所持罪
支払用カード電磁的記録不正作出準備罪
未遂罪

主な解釈論

有価証券

有価証券の定義や具体例については、別途「有価証券」の項目を参照してください。判例では、郵便貯金通帳やゴルフクラブの入会保証金預託書は有価証券に該当しないとされています。一方で、本質的に無効なものであっても、外見上一般人を誤信させるような場合、例えば、設立登記が無効な会社の取締役が発行した株券や、架空名義の手形などは有価証券となり得ます。切手は郵便法、印紙は印紙犯罪処罰法により処罰されるため、刑法上の有価証券には該当しません。

従来の判例では、テレホンカードは有価証券として扱われていましたが、支払用カード電磁的記録に関する罪が新設されたため、現在では支払用カード電磁的記録に関する罪のみが成立すると解釈されています。

行使の目的

判例と通説では、「使用する目的」があれば足りるとされています。通貨偽造罪とは異なり、流通させる目的は必ずしも必要ではありません。

行使

自己の信用力を示すための見せ手形も行使に該当します。ただし、真正な裏書のある手形を善意で取得した者が、それが偽造であることを知った後に裏書人に弁済を請求する行為は、当然の権利行使であるため、偽造有価証券行使罪にはあたりません。しかし、再裏書をする行為は行使罪にあたるとするのが通説です。

罪数に関する判例

行使の目的で手形を偽造し、その後虚偽の記入をした場合は、有価証券偽造罪の包括的一罪とされます。
有価証券偽造罪と偽造有価証券行使罪は、牽連犯の関係にあります。
偽造有価証券を行使して財物を得た場合、通貨の場合とは異なり、行使罪と詐欺罪は牽連犯の関係になります。

関連項目

贋金
文書偽造罪
電磁的記録
* 郵便切手類模造等取締法

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