有馬則維

有馬則維（ありま のりふさ）：筑後久留米藩を立て直した藩主

有馬則維は、延宝2年（1674年）に旗本・石野則員の五男として生まれました。石野家と有馬家は、共に赤松氏の支流という繋がりがありました。貞享元年（1684年）に旗本・有馬則故の養子となり、元禄5年（1692年）には将軍・徳川綱吉に拝謁しています。

宝永3年（1706年）に久留米藩主・有馬頼旨の末期養子となり、藩主の座を継承しました。当初、幕府の指示により則維が養子に選ばれたという経緯があります。同年、従四位下・玄蕃頭に叙任され、後に侍従に任官しました。正徳3年（1713年）には、初めて領地へ入る許可を得ています。

藩政改革への取り組み

藩主となった則維は、藩の財政改革に力を注ぎました。当時、久留米藩は財政難に苦しんでおり、則維は役人の整理や能力主義による官吏登用、そして徹底した倹約を通じて財政の立て直しを図りました。また、家老による合議制を弱体化させ、藩主である自身の権力強化にも取り組みました。

床島用水の建設

則維の治世における重要な功績の一つに、床島用水の建設が挙げられます。筑後川北側の地域は肥沃な土地であるにもかかわらず、水不足に長年悩まされていました。筑後川から水を引き込むことは技術的に困難であり、福岡藩との関係も考慮する必要がありました。

宝永7年（1710年）に大旱魃が発生し、多数の餓死者が出たことを受け、鏡村の庄屋・高山六右衛門らが藩に用水路建設を請願し、則維はこれを許可しました。草野又六と六右衛門の指揮のもと、3500人もの人々が工事に携わりましたが、難工事が続きました。福岡藩からの妨害もありましたが、最終的には大量の石や石俵を使い、用水路を完成させました。この工事には莫大な費用が投じられました。

晩年

享保14年（1729年）に則維は隠居し、家督を四男の頼徸に譲りました。元文3年（1738年）に65歳で亡くなっています。

系譜

父：石野則員
母：小笠原長真の娘
養父：有馬則故、有馬頼旨
正室：市姫（谷衛広の娘）
子：有馬則矩、有馬大次郎、有馬則如、有馬頼徸、有馬則恵
娘：稲葉董通正室、津軽信著正室、亀井茲延正室
養女：佐竹義堅正室（谷衛憑の娘）

有馬則維を題材とした作品

風野真知雄『大名やくざ』：型破りな藩主としての則維を描いています。
帚木蓬生『天に星 地に花』

参考文献

『寛政重修諸家譜』
* 『藩史大事典 九州編』

有馬則維は、藩政改革と用水路建設を通じて久留米藩の発展に貢献した名君として、今も語り継がれています。

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