有馬持家

有馬持家：室町幕府を支えた武将、その実像

有馬持家（ありま もちいえ）は、応永3年（1396年）頃に生まれ、宝徳2年（1450年）頃に没したとされる室町時代中期の武将です。摂津国有馬氏の当主であり、通称は兵部少輔。父は有馬義祐、子に元家がいます。赤松満祐、満政とは従兄弟にあたります。

将軍近習としての活躍

有馬氏は摂津国有馬郡を領し、将軍の近習として室町幕府に仕えました。本家の赤松氏とは異なり、幕府に直勤する立場でした。持家は初め教実（のりざね）と名乗っていましたが、後に第4代将軍足利義持から偏諱を受け、持家と改名しました。これは、彼が幕府から厚い信頼を受けていたことの証左と言えるでしょう。

永享元年（1429年）頃からは、第6代将軍足利義教（義持の弟）の御伴衆として仕えました。嘉吉元年（1441年）の嘉吉の乱では、本家である赤松満祐方には与せず、山名宗全率いる幕府側の赤松追討軍に加わったとされています。この行動は、持家が本家よりも幕府への忠誠を優先したことを示しています。

赤松氏との関係と苦悩

嘉吉の乱後、新たに播磨守護を兼ねた山名宗全が、持家の従兄弟である赤松満政の領する播磨東3郡を侵食しました。これに怒った満政は挙兵しますが敗北し、逃亡。満政は持家を頼ります。持家は一度は満政に呼応して挙兵しますが、再び敗れ、満政父子を討ち取って幕府へ帰順しました。しかし、この一連の行動が幕府から咎められ、隠居を余儀なくされます。持家にとって、赤松氏との関係は常に苦悩の種であったと言えるでしょう。

「三魔」の一人として

隠居後、持家は8代将軍足利義成（後の義政）に近侍し、その寵臣となったと言われています。義政の乳母である今参局（御今）や、義政の母である日野重子の従弟である烏丸資任と共に、義政側近の有力者として知られ、「三魔」と並び称されました（おいま、からすま、ありまと、「ま」がつく3人）。相国寺の瑞渓周鳳の日記『臥雲日件録』康正元年1月6日（1455年1月23日）条には「政は三魔より出づ」と記されています。

しかし、他の2人と異なり、持家に関しては特に専横の振る舞いは記録されていません。そのため、義政側近中の「ま」がつく人ということで数合わせとして挙げられたとも考えられています。また、『康富記』宝徳2年正月21日条に死去の情報が載せられている「赤松有馬入道」を持家のこととする説があり、そうなると義政将軍期としては時期が合わないため、近年では子の元家が三魔の一人であると言われています。

有馬持家は、室町幕府という激動の時代において、将軍の近習として、また赤松氏の一族として、複雑な立場に置かれながらも懸命に生きた武将でした。その実像は、史料が少なく不明な点も多いですが、室町時代の政治状況を理解する上で重要な人物の一人と言えるでしょう。

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