服部因淑

服部因淑 (はっとり いんしゅく)

服部因淑は、宝暦11年（1761年）に美濃国に生まれ、天保13年（1842年）に没した江戸時代の囲碁棋士です。井上春達因碩の門下で、七段上手まで昇り詰め、井上家の外家である服部家を興しました。

鬼因徹と呼ばれた青年時代

因淑は、若い頃は因徹と名乗り、本因坊元丈や安井知得仙知といった当時の強豪棋士たちと互角に渡り合いました。その実力は「鬼因徹」と称されるほどでした。

御城碁への出仕

59歳で初めて御城碁に出仕し、76歳まで11局を務めました。これは当時としては異例の遅咲きであり、彼の囲碁に対する情熱と実力の高さを物語っています。

井上家との関わり

因淑は、弟子の橋本立徹を養子に迎え、後に井上家を継がせました。この立徹は、十一世井上幻庵因碩として知られています。因淑は、幻庵因碩の後見役を務め、その才能を開花させる上で大きな役割を果たしました。

御城碁の戦績

御城碁では、林元美、本因坊丈和、井上因砂因碩、林柏悦、安井俊哲、安井知得仙知、本因坊丈策といった錚々たる棋士たちと対局しました。結果は必ずしも勝ち越しとは言えませんが、多くの強豪相手に互角に渡り合ったことは、彼の棋力の高さを証明しています。

1819年（文政2年）白番7目負 林元美
1820年（文政3年）白番中押負 本因坊丈和
1821年（文政4年）白番ジゴ 井上因砂因碩
1822年（文政5年）向三子9目勝 林柏悦
1823年（文政6年）白番2目負 井上安節
1825年（文政8年）向三子中押負 安井俊哲
1826年（文政9年）向二子14目負 林柏悦
1828年（文政11年）向二子中押負 安井俊哲
1830年（天保元年）先番ジゴ 安井知得仙知
1831年（天保2年）白番ジゴ 安井俊哲
1836年（天保7年）白番中押負 本因坊丈策

著作活動

因淑は、囲碁に関する著作も残しており、当時の囲碁界の発展に貢献しました。

『温故知新碁録』(1803年): 布石と打碁集
『繹貴奕範』(1809年): 布石と打碁集、山本源吉との二十一番碁を収録
『置碁自在』(1824年): 二子から九子までの変化図と解説

服部家の興隆とその後

因淑の御城碁出仕により、服部家は名門としての地位を確立しました。しかし、後継者の早世などにより、一時途絶えますが、後に幻庵因碩の弟子である加藤正徹によって再興されました。服部家は、安井門の坂口家と共に、外家でありながら二代以上続けて御城碁出仕者を輩出した稀有な家系となりました。

まとめ

服部因淑は、その卓越した囲碁の腕前と、井上家との深い関わりを通して、江戸時代の囲碁界に大きな足跡を残しました。彼の功績は、現代においても高く評価されています。

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