小朝拝

小朝拝（こちょうはい/こぢょうはい/こじょうはい）

小朝拝とは、古代日本において、元日の朝賀の後に天皇に拝謁する儀式です。読み方には諸説あります。

概要

朝賀は、大極殿にて文武百官が天皇を迎える公式な儀式です。一方、小朝拝は、昇殿を許されたごく一部の上級貴族のみが参加できる、より私的な儀式でした。

この私的性格が問題視された時期がありました。醍醐天皇は藤原時平体制下において、「王者に私なし。此の事これ私礼なり」と小朝拝を非難し、延喜5年（905年）から14年間、小朝拝は一時的に廃止されました。

歴史

小朝拝は、文徳天皇の頃から行われていたとされています。その後、朝賀と小朝拝が毎年交互に行われる慣例が成立しました。しかし、醍醐天皇による一時廃止を経て、藤原時平の死後、延喜19年（919年）に右大臣藤原忠平が天皇に再開を迫り、小朝拝は復活しました。一条天皇の頃になると、朝賀は廃絶し、代わりに小朝拝が毎年の恒例行事となりました。

応仁の乱で中断しましたが、後土御門天皇が延徳2年（1490年）に元日節会とともに真っ先に復興させました。明治維新後も「朝拝の儀」として続けられ、明治14年からは参列者に夫人同伴が許されるようになりました。

儀式の様子

朝賀の後、供御薬儀を挟んで清涼殿の東廂に御椅子が立てられます。上卿以下六位（六位蔵人が昇殿の下限）までの者が弓場殿（射場殿）の前で位階ごとに列をなして立ちます。『雲図抄』によれば、清涼殿正面に公卿、四位、五位、六位の計3列が並んだとされています。

上卿から蔵人頭を通じて天皇に小朝拝のために参内したことが奏上された後、天皇が母屋の御簾を垂れて出御し、御椅子に着席します。天皇から見て最前列にあたる公卿の列を皮切りに、上卿以下が袖を連ねて明義門・仙華門から清涼殿の庭中に参入し、列立（王卿・四位・五位・六位が各1列ずつ）した後に拝舞したと伝えられています。

参考文献

倉林正次「小朝拝」『国史大辞典 5』（吉川弘文館 1985年） ISBN 978-4-642-00505-0
橋本義彦「小朝拝」『日本史大事典 3』（平凡社 1993年） ISBN 978-4-582-13103-1
山中裕「小朝拝」『平安時代史事典』（角川書店 1994年） ISBN 978-4-04-031700-7
山中裕「小朝拝」『日本歴史大事典 2』（小学館 2000年）ISBN 978-4-09-523002-3
藤森健太郎「元日朝賀儀礼の変質と小朝拝の成立」三田古代史研究会 編『法制と社会の古代史』（慶應義塾大学出版会、2015年）ISBN 978-4-7664-2230-6
ドナルド・キーン上巻（日本語）『明治天皇〈上巻〉』新潮社、2001年（平成13年）。ISBN 978-4103317043.

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