木之本地蔵院

木之本地蔵院：眼の地蔵として知られる古刹

木之本地蔵院は、滋賀県長浜市木之本町に位置する時宗の寺院です。一般には「木之本地蔵」の名で親しまれており、正式な寺号は浄信寺といいます。長祈山という山号を持ち、本尊は秘仏である地蔵菩薩です。境内には、その写しである高さ約6メートルの地蔵菩薩大銅像が安置されており、日本三大地蔵の一つとして多くの信仰を集めています。

歴史

寺伝によれば、その起源は7世紀後半の天武天皇の時代に遡ります。難波浦（現在の大阪府）に漂着した金色の光を放つ地蔵菩薩像を祀るため、金光寺が建立されたのが始まりとされています。その後、木之本への移転については、以下の二つの伝承が残されています。

薬師寺の僧を開山とする伝承： 天武天皇4年（675年）に、聖武天皇の勅命を受けた薬師寺の僧、祚蓮上人が地蔵像を安置する地を求めて北国街道を下り、柳の下で休憩した際、像が動かなくなったため、その地を聖地と定め、柳本山金光善寺を建立したと伝えられています。この地が後に「木之本」と呼ばれるようになったとされています。
文武天皇による伝承： 文武天皇が北陸の白山参詣の途中、木之本の地で紫色の雲を見て、その地が霊地であると悟り、難波の金光寺を木之本に移したというものです。

これらの伝承がどこまで史実を反映しているかは定かではありませんが、弘仁3年（812年）には空海が巡錫し、地蔵経を書写・奉納したと伝えられています。また、昌泰元年（898年）には醍醐天皇の勅旨により菅原道真が参拝し、長祈山浄信寺と改号されました。

建武2年（1335年）には足利尊氏が毎年8月に法会を行うことを定め、これは現在も大縁日として続いています。尊氏は暦応元年（1338年）には田100石を浄信寺に寄進しています。

戦国時代には、賤ヶ岳の戦いで豊臣秀吉が本陣を置いたため、戦火で焼失しましたが、慶長6年（1601年）に豊臣秀頼の命を受けた片桐且元によって再建されました。しかし、元文4年（1739年）に再び焼失し、現在の本堂は宝暦年間（1751年 - 1764年）に僧仁山の勧進によって再建されたものです。

境内

木ノ本駅から石畳の坂を上ると、木之本地蔵院の入り口が見えてきます。毎年8月22日から25日にかけて行われる地蔵大縁日には、全国各地から多くの参拝者が訪れ、沿道には屋台が並び賑わいを見せます。

境内には、地蔵堂、阿弥陀堂、地蔵大銅像のほか、西国三十三箇所の観世音菩薩、撫仏である賓頭盧尊者、木之本ダキニシン天（豊川稲荷）、毘沙門天、鎮守としての五社宮（天満自在天、熊野大権現、正八幡大菩薩、春日大権現、稲荷大明神）・金比羅大権現（讃岐国松尾寺金光院より勧請）・岩神・秋葉三尺房大権現（遠州国秋葉寺より勧請）などが祀られています。また、古い眼鏡をおさめる処も設置されています。

各堂宇

本堂（地蔵堂）： 本尊である地蔵菩薩立像を中心に、閻魔王立像と倶生神立像が安置されています。本尊の地蔵菩薩立像と両脇侍は秘仏となっています。平成18年（2006年）には「御戒壇巡り」が行われ、参拝者が厨子の下を巡り、地蔵菩薩の手と五色の紐で結ばれた錠前に触れることでご利益が得られるとされています。
阿弥陀堂： 本堂の奥に位置し、阿弥陀如来立像と阿弥陀如来坐像が祀られています。
地蔵大銅像： 日本一の大きさを誇る地蔵菩薩の銅像で、本尊の写しとして約3倍の大きさに造られました。明治27年（1894年）に建立され、その際には県内はもちろん、愛知、岐阜、福井からも銅鏡が集められ、溶かして作られました。第二次世界大戦中には、当時の住職や東條英機の妻である東条勝子らの尽力により、供出命令を免れています。

文化財

木之本地蔵院には、数多くの文化財が所蔵されています。その中でも特に重要なものとして、以下のものが挙げられます。

重要文化財（国指定）：
絹本著色地蔵菩薩像（鎌倉時代）
木造地蔵菩薩立像（鎌倉時代）：本尊であり、像内納入品に仁治3年（1242年）8月の銘があります。
木造閻魔王立像（鎌倉時代）
木造倶生神立像（鎌倉時代）
木造阿弥陀如来立像（平安時代）
木造阿弥陀如来坐像（平安時代）
銅鏡（獅子牡丹蝶鳥文）（鎌倉時代）：嘉吉2年（1442年）7月6日の針書銘があります。
滋賀県指定有形文化財：
紙本著色東王父西王母図（桃山時代）
名勝（国指定）：
庭園：江戸時代中期、築山林泉式

その他

木之本地蔵院は、古くから多くの有力者や民衆の信仰を集めてきました。源義仲や足利義昭なども参拝した記録が残っています。

また、庭園には「身代り蛙」と呼ばれる蛙が生息しており、眼病患者が回復するように願いをかけ、片方の目をつむって暮らしていると言われています。

アクセス

JR北陸本線木ノ本駅下車、徒歩5分
* 北陸自動車道木之本ICから車で3分

もう一度検索