木山紹宅

木山 紹宅（きやま じょうたく）

武と雅に生きた戦国武将

木山紹宅は、戦国時代に肥後国（現在の熊本県）を拠点に活動した人物です。実名を惟久（これひさ）といい、益城郡木山城の城主を務めました。武将としての顔を持つ一方、当代一流の連歌師としても知られ、その生涯は戦乱の時代にあって異彩を放っています。

肥後での勢力と連歌への道

自らは清和源氏新田氏の流れを汲む国人領主であると称しました。九州に下った後は、肥後の有力者である阿蘇氏の傘下に入り、木山城と赤井城を足がかりに益城郡の木山一帯を治めました。やがて実子の木山信連（紹印）に家督を譲ると、紹宅自身は上洛し、連歌の道に深く入ることを決意します。当時、連歌界で最高の権威を誇っていた里村紹巴（さとむら じょうは）の門下に入り、その高弟の一人として名を馳せました。この後、彼が京都に留まったのか、再び故郷である肥後へ戻ったのかは定かではありません。

木山城の落城

天正13年（1585年）9月19日、木山神宮の例祭が行われていたその日、肥後には南九州から北上してきた薩摩の大名、島津義久の軍勢が迫っていました。島津軍の攻撃を受けた木山城は力尽き、落城します。この時、紹宅が城にいたかどうかは不明ですが、長年拠点としてきた城が失われたことは、彼の人生にとって大きな転換点となったことは間違いありません。

黒田家との繋がり

豊臣秀吉による九州平定後、豊前国（現在の大分県の一部）を領地として与えられた黒田孝高（よしたか、通称 官兵衛）は、木山紹宅を賓客として自身の陣営に迎え入れました。これを機に、黒田孝高はたびたび連歌会を催すようになり、紹宅は孝高にとって連歌の師範として厚く敬われる存在となりました。天正18年（1590年）に中津で開催された連歌会では、主催者である孝高とその嫡男である長政に続いて、三番目に句を詠むという、非常に重要な位置づけで参加しています。これは、彼が武将としての立場以上に、連歌師として高い評価を受けていたことを示すエピソードと言えるでしょう。

波乱の最期

慶長2年（1597年）、豊臣秀吉が二度目の朝鮮出兵（慶長の役）を命じると、黒田家もこれに応じることになりました。黒田孝高自身と、家督を継いでいた長政は朝鮮へ渡海します。この時、豊前中津には孝高の次男である熊之助（くまのすけ）が残されていましたが、後に熊之助も父たちの後を追って朝鮮へ渡ろうとします。木山紹宅は、この若い熊之助の渡海に同行することを選択しました。しかし、不運にも彼らの乗った船は海難事故に遭ってしまいます。そして、この事故により、木山紹宅は熊之助らと共に波間に消え、波乱に満ちた生涯を終えたのでした。武将として肥後を治め、連歌師として高名となり、最後は黒田家の縁で異国の海に散ったその人生は、まさに戦国という時代の奔流に翻弄されたものでした。

もう一度検索