木戸新太郎

人物・来歴

木戸 新太郎（きど しんたろう）は、1916年（大正5年）5月17日に生を受け、1975年（昭和50年）8月19日に逝去した日本のタップダンサー、喜劇人、そして映画俳優です。本名を木村 新吉といい、映画出演の際は多くが愛称である「キドシン」名義を使用しました。

北海道庁函館区（現在の函館市豊川町）で、海産物商を営む恵まれた家庭の長男として育ちました。地元の名門校である宝尋常高等小学校を卒業後、北海道庁立函館商業学校に進学しますが、1932年（昭和7年）に父が急逝したことを機に学業を中断し、家業を手伝うこととなります。この頃、映画に登場するフレッド・アステアの華麗なダンスに魅了され、タップダンスの世界に強い関心を抱くようになります。

タップダンスへの情熱を胸に、22歳となった1937年（昭和12年）に上京。当時著名なタップダンサーであった中川三郎に師事します。師である中川が東京吉本に所属していた縁から、翌1938年には吉本興業の傘下で自らの劇団を立ち上げ、軽演劇の世界へと足を踏み入れました。当初「暁楽劇団」、後に「キドシン一座」と名を変えたこの劇団は、瞬く間に観客の支持を得て、清水金一や森川信といった同時代の人気喜劇人と肩を並べる存在に成長します。戦時下の1941年（昭和16年）には、長年の夢であった北海道巡業を実現させ、故郷函館での凱旋公演を盛況のうちに終えました。

戦後、1948年（昭和23年）に劇団を解散した木戸は、活動の場を映画界に移し、新東宝へ入社します。斎藤寅次郎監督の映画『誰がために金はある』で銀幕デビューを飾り、同年1月に公開されて以降、斎藤監督の作品に数多く出演することとなります。活動の中心は新東宝でしたが、東映の前身である太泉映画や松竹京都撮影所、さらには大映京都撮影所、宝塚映画、東映東京撮影所など、多岐にわたる会社の作品にも出演し、その存在感を示しました。

1956年（昭和31年）には日活へ移籍。ここでは主に脇役として、人気スター石原裕次郎の作品などにも顔を見せました。また、戦前に東京吉本に所属していた経緯から、この時期には大阪の吉本新喜劇にも客員として出演するなど、古巣とも関わりを持ち続けました。

1975年（昭和50年）8月19日、脳出血のため東京の病院で、59歳で惜しまれつつこの世を去りました。その喜劇人としての功績は称えられ、東京・浅草寺境内に建立された「喜劇人の碑」にその名が刻まれています。

主な出演作品

新東宝を中心に、日活、松竹、東映、大映、宝塚映画など、数多くの映画に出演しました。特に斎藤寅次郎監督作品への出演が多く、『誰がために金はある』でのデビュー以降、『唄まつり百万両』、『嫁入聟取花合戦』、『新東京音頭 びっくり五人男』、『憧れのハワイ航路』、『東京河童まつり』、『大当りパチンコ娘』、『珍説忠臣蔵』などでそのユーモラスな演技を見せました。日活移籍後も『ドラムと恋と夢』、『鷲と鷹』、『嵐を呼ぶ男』といった作品に出演し、名脇役としてスクリーンに彩りを添えました。

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