木食白道

木食白道（もくじき びゃくどう）とは

木食白道（1755年 - 1826年）は、江戸時代後期の仏教行者であり、仏像彫刻家としても知られています。独特の微笑を浮かべた「微笑仏」を各地に残し、師である木喰（もくじき）とともに全国を旅しながら造仏活動を行いました。白道が制作した仏像は「白道仏」と呼ばれ、160体以上が確認されています。

白道の生涯

出生と修行時代

白道は、甲斐国（現在の山梨県）に生まれ、幼少期に法幢院で出家しました。その後、父と共に全国を巡礼し、西国三十三所や四国八十八箇所を巡りました。父を亡くした後、六十六部聖となり、北陸地方や佐渡島を巡り、信濃国で善光寺参詣などを経て甲斐に戻りました。その後も旅を続け、上野国や東北地方で納経を行いました。

木喰との出会い

安永7年（1778年）頃、白道は蝦夷地（現在の北海道）に渡り、そこで木喰の弟子となりました。白道が木喰と出会った時期ははっきりしていませんが、伊豆国で出会ったという説や、木喰が伊豆に滞在していた時期に出会ったという説があります。

廻国と造仏活動

木喰の弟子となってからは、関東地方や東北地方をともに巡り、北海道にも渡って造仏活動を行いました。白道は、北海道で初期の木喰仏とされていた像の多くを制作していたことが、近年の赤外線調査によって明らかになりました。

多摩における活動

白道は、武蔵国多摩郡（現在の東京都多摩地域）でも活動しました。あきる野市や八王子市には白道に関する資料が多く残されており、恵比寿講の隆盛との関連性が指摘されています。また、真照寺では薬師如来の開眼や梵鐘制作を行いました。

晩年

寛政12年（1800年）頃には信濃国伊那地方に滞在し、造仏活動を行いました。享和3年（1803年）には、生地の萩原で天満宮の建立に携わり、翌年には山梨市で子安観音菩薩像を制作しました。晩年は都留郡鳥沢村に草庵を構え、富士北麓方面でも活動を行いました。文政8年（1826年）に鳥沢村で病死し、入定したという伝承も残っています。

白道仏について

特徴

白道仏は、一木造で微笑みを浮かべた「微笑仏」であることが特徴です。背面には「南無阿弥陀仏」の六字名号が墨書されています。木喰仏と同様の特徴を持ちますが、白道仏は角ばった造形で、逆三角形の頭や広めの額、豊満な顎が特徴的です。また、木喰仏が千体仏造立を掲げていたのに対し、白道仏は子安地蔵や恵比寿大黒天など、庶民の信仰に基づく造仏活動が中心でした。

種類

白道仏には、子安観音、地蔵菩薩、薬師如来、恵比寿・大黒天、観世音菩薩、不動明王などがあります。特に恵比寿大黒天像は、木喰の作例が少ないため、白道独自の像として評価されています。子安観音菩薩は、立像で2メートルほどの巨大なものから、15センチメートルほどの小型のものまであります。

書画

白道は仏像だけでなく、書画も残しています。特に六字名号の墨書は、笹の葉を連ねた形状の「笹字」で書かれているのが特徴です。落款には梵字や「佛法僧寶」などの文字が用いられています。

白道に関する資料

白道の事跡を知る上で重要な資料として、以下のようなものが挙げられます。

萩原木食繁昌（古日記）: 白道が故郷に帰郷した際の様子が記された古日記。白道の生年を推定する上で重要な資料。
七福神の由来: 白道が天明の大飢饉の際に七福神を彫り、人々に配布したことを示す史料。
聖観世音本堂鎮守金比羅本社拝殿建立: 白道が江戸で勧進を行った際の勧進帳。
天満宮縁起: 白道が萩原天満宮を建立した際の記録で、自身の半生を記したもの。
日本回国納経牒: 白道が廻国修行を行った際の納経帳。
木食白導一代記: 白道自身が記した記録で、廻国修行の様子や造仏活動について記述。

これらの資料を通じて、白道の生涯や活動を詳しく知ることができます。

研究史

木喰の研究は早くから進められていましたが、白道に関する研究は遅れていました。しかし、近年では白道に関する資料の発掘や研究が進み、その活動や作品が広く知られるようになってきました。

主要な研究者

柳宗悦: 木喰研究の第一人者。白道と木喰の関係性について言及。
曽根原駿吉郎: 初めて白道の生涯と作品を総合的に論じた『木喰白道』を刊行。
清雲俊元: 「萩原木食繁昌」を紹介し、白道の生年を推定。
木下達文: 『法幢院過去帳』に基づいて白道の生没年を確定。
近藤暁子: 白道が制作した初期の木喰仏について研究。

主な展覧会

1974年: 山梨県教育委員会主催「甲斐の木喰」展
1999年: 大月市郷土資料館「木食白道」展
2001年: 福生市郷土資料室「多摩の微笑仏-木食白道-」展
* 2008年: 山梨県立博物館「木食白道-知られざるもう一人の木食-」展

まとめ

木食白道は、江戸時代に活躍した仏教行者であり、優れた仏像彫刻家でもありました。師である木喰とともに全国を巡り、多くの「微笑仏」を制作し、人々に安らぎを与えました。彼の生涯や作品は、多くの研究者によって研究が進められており、その魅力は今もなお多くの人々を惹きつけています。

木食白道は、単なる仏像彫刻家としてだけでなく、民衆の信仰や文化を支えた重要な人物として、今後も注目され続けるでしょう。

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