本因坊道知

本因坊道知

本因坊道知（ほんいんぼう どうち、1690年 - 1727年）は、江戸時代中期に活躍した囲碁棋士であり、五世本因坊として知られています。本姓は神谷氏、法名は日深。

生涯

道知は江戸に生まれ、父は御小人目付小頭役を務めていました。8歳で囲碁を始め、10歳で四世本因坊道策に入門。道策は、後継者候補であった道的、策元が相次いで夭逝した後、道知の才能を見抜き、1702年の臨終の際に彼を本因坊家の家督を継がせました。同時に、井上道節因碩を後見役とし、道知の育成を託しました。

道知は1702年に御城碁に初出仕し、林玄悦門入に先番で勝利。翌年の御城碁では、四段格ながら安井仙角に先番5目勝ちを収めました。井上道節は道知の実力を高く評価し、1705年の御城碁で六段の安井仙角に互先の手合割を申し入れましたが、仙角がこれを拒否したため、道知との間で先相先の手合による争碁が行われることとなりました。この争碁は「宝永の争碁」と呼ばれ、道知が3連勝したことで仙角は互先の手合を認めました。1706年には道節との間で定先十番碁を打ち、3勝6敗1ジゴという結果を残しています。翌年には道知先相先で七番碁を打ち、勝ち越したことで七段を認められ、道節は後見を解きました。

1710年には、琉球国中山王の貢使随員である屋良里之子と向三子で対戦し勝利。この際、屋良への免状発行のために道節を碁所に推挙しています。1719年に道節が亡くなった後、1720年に他の家元三家に働きかけ、準名人（八段）に推薦され、同年の御城碁では井上策雲因碩に向先の手合で対局しました。翌1721年には、井上家、林家の推薦を受け、名人碁所となりました。

1722年には、甥の井口知伯を跡目と定め、1727年に死去。本妙寺に葬られました。

人物

道知は、道策の実子であったという説も存在します。また、門下の長谷川知仙は安井仙角の跡目となりましたが、早世しました。囲碁だけでなく将棋も得意であり、六段の腕前であったとされています。七段の因理という者に香落ちで勝利した際には、その場に居合わせた大橋宗桂、安井仙角らから「盤上の聖」と称えられたという逸話も残っています。

御城碁戦績

1702年: 先番7目勝 林玄悦門入
1703年: 先番5目勝 安井仙角
1704年: 白番2目勝 林玄悦門入
1705年: 先番1目勝 安井仙角
1706年: 白番5目負 安井仙角
1707年: 先番6目勝 井上因節
1708年: 白番2目負 井上因節
1709年: 先番5目勝 安井仙角
1710年: 白番2目負 安井仙角
1711年: 先番5目勝 林朴入門入
1712年: 白番2目負 林朴入門入
1713年: 先番5目勝 井上因節
1714年: 先番3目負 井上因節
1715年: 先番5目勝 安井仙角
1716年: 白番2目負 安井仙角
1717年: 先番5目勝 井上因節
1718年: 先番3目負 林朴入門入
1719年: 先番5目勝 林朴入門入
1720年: 白番ジゴ 井上策運因碩

ただし、これらの成績は、他家元三家当主に対して互先の手合にて道知の先番は5目勝ち、白番では2、3目負けと、結果が固定化されていたとも言われています。道知が名人碁所就位を望んだ際には、御城碁にて「合議的作碁及び譲歩等の交渉に応ぜず、道知一人は実際力量の有らん限り対局すべし」と要求したともされています。1720年の御城碁の棋譜は、146手目までが1697年の本因坊道策と熊谷本碩の碁と全く同じであることも、作為的な要素を示唆していると考えられています。

傅信録

道知の時代には、過去の火災で焼失した古文書の再調査と編集が行われ、1706年に門人の高橋友碩、堀部因入によって「傅信録」が完成しました。この書には、本因坊一世算砂から四世道策までの事蹟が記録されています。

碁将棋事績の取調

1726年、寺社奉行黒田豊前守より囲碁、将棋の由来について調査を指示され、碁については家元四家に松久寺住職込山忠左衛門を加えて調書を作成し、道知が提出しました。

新撰碁経訴訟

道策の門人であった小倉道喜が秋山仙朴と名乗り、「新撰碁経大全」を出版しました。その再版の序文に「今道策流學者予外無」とあったのを三世本因坊道悦が道知に知らせ、道知はこれを問題視し、寺社奉行に訴え出ました。その結果、同書は絶版となり、仙朴は十日間の戸締に処せられました。

参考文献

安藤如意、渡辺英夫『坐隠談叢』新樹社 1955年
『道知（坂田栄男）』日本囲碁大系5
福井正明『道的・道節・道知 元禄三名人打碁集』誠文堂新光社 2009年

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