秋山仙朴

秋山仙朴（あきやま せんぼく）は、江戸時代に活躍した囲碁棋士、著述家です。生没年は不詳ですが、17世紀から18世紀にかけて活動していました。元の名は小倉道喜（おぐら どうき）といい、武蔵国（現在の埼玉県、東京都、神奈川県の一部）で生まれました。

道喜は、はじめ本因坊道悦に入門し、その後、当時最強の棋士であった本因坊道策の門下となりました。道策とは二子の手合で対局し、1勝2敗の成績を残しています。また、本因坊道知とは先番で互角に打ち合い、白番では敗れたものの、上手（七段）に対して先相先の手合（六段）に進むなど、着実に実力を上げていきました。道策の死後は道知の門下となりますが、不品行があったとして、道悦や井上道節因碩からたびたび咎められたとされています。

1707年（宝永4年）、道喜は出奔し、泉州堺（現在の大阪府堺市）に移り住み、秋山正廣と改名、仙朴と号しました。この出奔により、碁家からは破門されたと伝えられています。

1720年（享保5年）には、囲碁の心得や定石について記した『新撰碁経大全』二巻を出版しました。しかし、1725年（享保10年）に再版する際、前書において「今道策流を学ぶ者は予の他にいない」と記したことが問題となります。当時、京都で隠居生活を送っていた道悦がこの記述を目にし、不届きであるとして江戸の道知に処分を求めたのです。道知は他の家元の主だった者と協議し、碁所の立場上、この件を看過することはできないとして、寺社奉行の小出信濃守に訴え出ました。その結果、町奉行を通じて同書は絶版となり、仙朴は十日間の戸締めに処せられるという処分を受けました。

仙朴は、『新撰碁経大全』の別版として、名古屋の版元から『當流碁経大全』を出版しています。また、道策時代の打碁集である『古今當流新碁経』も著しています。

秋山仙朴は、その著作が原因で処罰を受けるなど、波乱に満ちた人生を送った囲碁棋士でした。しかし、その著作は、江戸時代の囲碁文化を研究する上で貴重な資料となっています。

参考文献

安藤如意、渡辺英夫『坐隠談叢』新樹社 1955年
林元美著・林裕校注『爛柯堂棋話』平凡社 1978年

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