朱祐杬

朱祐杬（しゅ ゆうげん）は、1476年7月22日に生まれ、1519年7月13日に亡くなった明の皇族です。彼は、憲宗成化帝の四男として、邵宸妃（孝恵太后）を母に持ち、孝宗弘治帝の異母弟、そして武宗正徳帝の叔父にあたります。

1487年、朱祐杬は興王に封じられ、1494年に自身の封地である安陸州鍾祥県へと赴任しました。1519年に亡くなると、正徳帝から「献王」の諡号を贈られました。彼の人生は、皇族としての地位と、後の歴史に大きな影響を与えることになる出来事への序章でした。

1521年、正徳帝が後継者を残さずに崩御したことで、明朝の皇位継承は大きな転換期を迎えます。内閣大学士の楊廷和は、「皇明祖訓」に基づき後継者を探すことになりました。弘治帝には夭逝した二人の息子しかおらず、成化帝まで遡ると、長男、次男も夭逝していました。三男が弘治帝、そして四男が朱祐杬でしたが、彼も既に亡くなっていました。しかし、朱祐杬には二人の息子がおり、長男は夭逝、次男の朱厚熜が残っていました。この朱厚熜こそが、正徳帝の従弟であり、新帝として迎えられることになります。

朱厚熜は即位後、実父である朱祐杬に対する尊号を追贈したいと考えるようになり、これが3年半にも及ぶ「大礼の議」という論争の火種となりました。朝廷の反対を押し切って、嘉靖帝は実父に興献帝という追号を贈りました。さらに、生母の蔣氏には章聖皇太后という尊号を贈り、弘治帝は「皇伯考」と改称されました。そして1538年9月、朱祐杬には「睿宗」という廟号が追贈され、以前の興献帝の墓は明の顕陵へと改葬されたのです。これは、嘉靖帝が実父を顕彰し、自らの正統性を強化しようとした結果でした。

朱祐杬の宗室としての家族構成は以下の通りです。

正室：慈孝献皇后蔣氏（蔣斅の娘）
側室：温静淑妃王氏
男子：朱厚熙（夭折）、朱厚熜（嘉靖帝）
女子：長寧公主、善化公主、永福公主、永淳公主

このように、朱祐杬は一人の皇族として生涯を終えましたが、その死後、息子の嘉靖帝の即位と、それに伴う一連の出来事によって、明朝の歴史において重要な役割を果たすことになったのです。彼の生涯は、単なる皇族の記録にとどまらず、明朝の政治、宗教、社会構造に大きな影響を与えた一例と言えるでしょう。

もう一度検索