李亀年

李亀年（り きねん）

李亀年は、中国唐代の音楽家であり、特に玄宗時代に活躍したことで知られています。彼は趙郡柏人県の出身で、出自としては北斉の文宣帝の皇后、李祖娥の叔父である李希礼の子孫です。生没年は不明ですが、彼の音楽的業績は後世に大きな影響を与えました。

経歴

李亀年は、右散騎常侍の李景伯の息子として生まれ、音楽の才能を早くから示しました。開元年間、彼は弟たちと共に長安で音楽活動を行い、その名声は瞬く間に広まりました。彼は特に音律に秀でており、馬仙期や賀懐智と共に歌界のトップに立っていました。

彼の代表曲「渭川」を作曲した際には玄宗から特別に恩恵を受け、後に洛陽に大規模な邸宅を構えることになります。その邸宅は豪華絢爛で、長安の貴族たちをも超えるものでした。彼はその後、宮中の音楽シーンに深く関与し、演奏会の場で数々の音楽を披露しました。

玄宗が「紫雲廻」や「凌波曲」を製作した際には彼が篳篥を担当し、その腕前を見せつけました。また、興慶宮にある沈香亭で、李白の詩「清平調」を歌った際には、玄宗と楊貴妃が耳を傾け、その美しい歌声に感動したと言われています。そこでの演奏は、その時代の楽曲の中でも群を抜いて素晴らしいものであったと称賛されました。

天宝年間には梨園が設立され、彼もこの新たな宮廷音楽の役割を担いました。彼は鼓の達人でもあり、修行の厳しさを語るエピソードも残っています。

安史の乱以降

安史の乱が勃発した後、李亀年は長安を逃れ、江南に流落しました。困難な状況の中でも、彼は歌を通じて生計を立てることができました。彼の歌声は多くの人々に感銘を与え、涙を流さぬ者はいなかったと言われています。流浪の途中、彼は杜甫と再会し、詩「江南逢李亀年」を語り合いました。

同時代の楽人たち

李亀年と同時代には、他にも多くの著名な楽人が存在しました。例えば、張野狐は箜篌の名手で、演奏会では李亀年と共に演奏しました。賀懐智は琵琶の名人で、音律に通じたことで知られています。李謩は竹製の笛に秀でた楽士であり、馬仙期は音楽の名手として梨園の楽士の一員でした。

また、雷海青は悲劇的な運命を辿った楽士で、長安陥落後に捕らえられて音楽を強要され、彼の勇敢な姿は後世に語り継がれました。

伝記資料

彼の生涯や音楽活動については、さまざまな文献に記録が残されています。楽史『楊太真外伝』や『明皇雑録』が主な資料とされています。これらの記録から、彼の音楽的な才能や、その時代背景を知ることができます。李亀年は、唐の音楽史において重要な人物であり、彼の貢献は今なお評価されています。

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