李侃 (正統進士)

李侃（り がん）

李侃（1407年 - 1485年）は、明代の官僚であり、字を希正と称しました。彼の本貫は順天府東安県にあります。

生涯

1442年（正統7年）、李侃は進士に及第し、官僚としての道を歩み始めます。1445年（正統10年）には、戸科給事中に任じられ、その才能を発揮しました。1449年（正統14年）8月、郕王朱祁鈺が監国となると、李侃は国を護るために三つの重要な提言を行いました。それは、将才を選抜すること、勇猛な民を募ること、そして戦車を有効活用することでした。オイラトのエセン・ハーンが北京に迫った際には、朝廷内で城外の馬草を燃やして敵を防ぐという意見が出ましたが、李侃は敵が持久戦を望んでいないこと、そして民に無益な損害を与えることを理由に反対しました。これらの提言はいずれも受け入れられ、李侃の先見の明が示されました。

また、李侃は私情を捨てずに公務を優先する姿勢も持ち合わせていました。父母が容城にいた際には、危険を顧みず暇乞いをして父母を迎えに行きました。1450年（景泰元年）、土木の変で亡くなった将兵の子孫を記録する議論が起きた際、李侃は変を生き延びた者を厳しく譴責するよう進言しました。さらに、英宗が帰国することになった際には、同僚と共に丁重に迎えるよう主張しましたが、景泰帝（朱祁鈺）の意に逆らい詰問されるという事態に陥ります。しかし、礼部尚書胡濙の弁護によって解放され、その後都給事中に進みました。

李侃の功績はこれに留まりません。軍事費の増大に伴い、天下の学校の儒学教師の俸給が減額されると、彼は上奏して元の俸給額に戻させました。1452年（景泰3年）には、戸部尚書の金濂が租税を不正に徴収したことを非難し、法吏に引き渡しました。また、石亨の甥である石彪が民の財産を侵害していた際には、厳しい法を制定し、勲戚や宦官による民からの収奪を厳禁するよう訴えました。李侃の提言は、一部を除いて景泰帝によって承認されました。

当時の給事中の中で、不興を被っても直言をすることで知られていた林聡と並び、李侃もまた高い志を持ち俗に染まらない人物として名声を得ていました。景泰帝が皇太子を朱見深から朱見済に変更しようとした際、大臣たちが皇帝の意向に唯々諾々と従う中、李侃は皇太子に失徳がないことを涙ながらに訴えました。林聡や御史の朱英も廃太子に反対し、その行動は世論を感嘆させました。李侃はこの功績により詹事府丞に抜擢されました。

1457年（天順元年）、李侃は太常寺丞に任じられ、その後太僕寺丞、1463年（天順7年）には太僕寺少卿に進みました。1466年（成化2年）には右僉都御史となり、山西巡撫を務めました。この頃、李侃は兵士の配置について重要な提言を行いました。彼は、南方出身の兵士を北方辺境に配置すると寒さに弱く、北方出身の兵士を南方辺境に配置すると暑さに弱いという問題を指摘し、それぞれの出身地に合わせた兵士編成を提言しました。しかし、この提言は採用されませんでした。李侃は巡按の李傑の罪を暴いて上奏しましたが、李傑の告発を受け、調査の結果李傑が官位を剥奪され、李侃は無罪とされました。

1470年（成化6年）には、属吏の考査を行い、布政使の王允や李正芳ら160人を罷免するよう上奏しました。母の死去により喪に服すため帰郷しようとした際には、軍民が泣いて引き止めようとしたという逸話が残っています。1473年（成化9年）、喪が明けた後も李侃は出仕せず、官界から引退しました。そして、1485年（成化21年）9月庚申、79歳でこの世を去りました。

子女

李侃には、以下の二人の息子がいました。

李徳恢（厳州府知府）
李徳仁（河東塩運使）

脚注

参考文献
『明史』巻159 列伝第47

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