李拯

李拯（り じょう、生年不詳 - 886年）は、唐代の詩人であり、字は昌時、本貫は隴西郡狄道県です。

生涯

咸通12年（871年）に科挙に合格し、進士となりました。その後、各地の節度使の幕府に仕えましたが、黄巣の乱に遭遇し、晋州に避難しました。しかし、僖宗にその才能を認められ召し出され、尚書郎から老功郎中・知制誥という要職に就きました。

光啓2年（886年）に朱玫が叛乱を起こすと、李拯は叛乱軍に捕らえられ、やむなく翰林学士に任ぜられました。しかし、節義を汚してしまったことを深く後悔し、朱玫の横暴な振る舞いに強い不満を抱いていました。その後、朱玫が滅ぼされた際、李拯は混乱の中で殺害されました。

詩人としての李拯

李拯は、詩人としても名を残しており、特に七言絶句の作品が知られています。

代表作として、『朝より退いて終南山を望む』があります。この詩は、官僚生活から離れ、静かな山を眺める心境を詠んだもので、彼の内面の葛藤や自然への憧憬が表現されていると言えるでしょう。

『朝より退いて終南山を望む』

退朝望終南、
心閑境亦含。
松雲如有意、
来共夕陽談。

現代語訳

朝廷を退き、終南山を望む。
心が静かであれば、景色もまた心に染み入る。
松の梢にかかる雲は、まるで意思を持っているかのようで、
夕日を眺めながら、語り合おうとやってくるようだ。

まとめ

李拯は、激動の時代を生きた詩人であり、官僚でした。黄巣の乱や朱玫の叛乱といった事件に巻き込まれ、不遇な死を遂げましたが、彼の詩は、その時代背景や彼の内面の葛藤を今に伝えています。

*出典:『唐詩選』（版：岩波文庫、註解：前野直彬）

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