李賢 (明)

李賢（り けん）

李賢（1408年 - 1467年）は、明代中期に活躍した政治家・廷臣です。字は原徳、諡号は文達。南陽府鄧州の出身で、その卓越した才能は早くから知られていました。

若き日の才能開花

李賢は、郷里で天才として名を馳せ、1432年には科挙の地方試験である郷試で首席合格（解元）を果たします。翌1433年には進士に合格し、99人中24位という優秀な成績を収めました。1436年には吏部主事に任じられ、その後郎中に昇進。順調にキャリアを重ねていきました。

土木の変と政界での台頭

1449年、正統帝（英宗）に従い土木の変に従軍しますが、明軍はエセン・ハーン率いるオイラト軍に大敗。李賢は辛くも生き残ります。この敗戦後、景泰帝の時代には兵部右郎中として、なおも政権の中枢で活躍しました。そして英宗が奪門の変で復位し天順帝となると、李賢は左侍郎、次いで吏部尚書に任じられ、天順年間には朝廷の実力者としてその手腕を発揮しました。

政敵との激しい争い

しかし、李賢の台頭を快く思わない者もいました。奪門の変で功績のあった石亨や曹吉祥らは、李賢を疎み、天順帝に讒言して李賢を左遷させようとしました。この動きに対し、李賢は政敵たちと激しく対立し、政争を繰り広げました。1460年には甥の石彪の罪を理由に石亨を獄死に追い込み、1461年には曹吉祥とその一族の反乱を鎮圧して死罪に処すなど、その権勢を強めていきます。こうした動きを通して、天順帝の権力確立に大きく貢献し、事実上の宰相として絶大な信任を得るに至ります。

皇帝からの信任と突然の死

1464年、天順帝が崩御すると、その息子である成化帝に仕えることになります。1466年、実父の死去により喪に服すため隠退を申し出ますが、成化帝はこれを許さず、復職を命じました。この出来事は、李賢の優れた政治力と皇帝からの厚い信任を物語るものです。しかし復帰から数ヶ月後、李賢は急死。享年59歳でした。成化帝はその死を深く悼み、李賢に太師の位を追贈しました。

文化人としての側面

李賢は政治家としてだけでなく、文化人としても才能を発揮しました。著書に『鑑古録』や『大明一統志』などがあります。また、程敏政は李賢の娘婿であり、文化人としての繋がりも持っていたことが窺えます。

まとめ

李賢は、明代中期において傑出した政治家であり、その才能は早くから認められていました。土木の変という危機を乗り越え、政権の中枢で活躍し、皇帝の信任を得て権力を確立しました。しかし、政敵との争い、そして突然の死は、その激動の生涯を物語っています。文化人としても才能を発揮し、後世に名を残しました。

参考文献

「アジア歴史辞典」（平凡社）
『明史』巻176 列伝第64

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