李邽

李邽（り けい、生没年不詳）は、五胡十六国時代に活躍した人物であり、遼西郡の出身です。彼の生涯は、冉魏への仕官から始まり、前燕への降伏、そして前秦への仕官へと、激動の時代を反映したものでした。

冉魏への仕官と趙郡太守

李邽は、冉魏に仕え、趙郡太守という重要な役職に任じられました。趙郡は、当時の政治・軍事的な要衝であり、その太守を務めることは、李邽が一定の信任を得ていたことを示唆しています。しかし、冉魏の国力は衰退しつつあり、周辺の異民族勢力が台頭していました。

前燕への降伏と慕容恪の慰撫

351年8月、前燕の輔国将軍である慕容恪が常山に南進し、九門に到達すると、李邽は趙郡を挙げて前燕に降伏しました。これは、冉魏に見切りをつけ、より強大な勢力である前燕に自らの身を託す決断だったと考えられます。慕容恪は、李邽の降伏を快く受け入れ、手厚く慰撫しました。そして、李邽を伴って中山の攻略に当たりました。

豫州刺史としての活躍

前燕に仕えた李邽は、豫州刺史に任じられました。豫州は、前燕の南部に位置し、東晋との国境地帯でした。369年9月、東晋の大司馬である桓温が軍を率いて前燕に侵攻すると、李邽は豫州の兵5千を率いて、桓温軍の糧道を遮断するという重要な任務を果たしました。この功績により、李邽は前燕における地位を確固たるものにしたと考えられます。

前秦への仕官と尚書への任官

370年12月、前燕は前秦によって滅ぼされました。前燕の臣下の多くは、前秦に登用され、李邽もその一人でした。彼は前秦において尚書に任じられました。尚書は、中央政府の要職であり、李邽が前秦においても一定の評価を得ていたことを示しています。

その後の事績

李邽の、これ以後の事績は、史書には記されていません。しかし、彼の生涯は、五胡十六国時代の激動を生き抜いた一人の人物として、記憶されるべきでしょう。冉魏、前燕、前秦という、異なる王朝に仕えながらも、それぞれの立場で忠勤に励んだ彼の姿は、当時の人々の生き方の一つの典型を示していると言えるかもしれません。

参考文献

『資治通鑑』巻99、巻102
『十六国春秋』巻19、巻26、巻29、巻36

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