冉魏

冉魏（ぜんぎ）

冉魏（350年 - 352年）は、五胡十六国時代に漢族の冉閔によって建てられた国です。国号は大魏ですが、魏を国号とする国は複数あるため、冉閔の魏を冉魏と呼んで区別します。あまりに早く滅亡したため、「五胡十六国」の一つには含まれていません。

歴史

石虎の時代

建国者の冉閔は後趙の3代皇帝石虎の養孫であり、元々は石閔と名乗っていました。石閔は勇猛果敢にして戦上手であり、後趙の将軍として各地の征伐に赴き、多数の武勲を挙げました。石虎からも実の孫同様に寵遇されていました。

国権を掌握

349年4月、石虎が逝去して子の石世が後を継ぐと、石閔は石遵へ石世を除いて自ら帝位に即くように勧めた。5月、石遵が挙兵すると、石閔はその前鋒となって鄴を攻略しました。石遵が即位すると、石閔は都督中外諸軍事・輔国大将軍に任じられましたが、皇太子に立てるという約束を反故にされた事で不信感を抱きました。

11月、石遵は石閔誅殺を目論んだが、鄭皇太后の反対に遭い取りやめとなりました。石閔は政変を起こし、石遵を処刑しました。代わって石鑑を擁立すると、石閔は大将軍に昇進し、武徳王に封じられました。これ以降石閔は朝政を牛耳るようになりました。

12月、石鑑は部下に命じて石閔らを闇討ちさせたが失敗しました。

同月、新興王石祗は石閔・李農の誅殺を掲げ、羌族酋長姚弋仲・氐族酋長蒲洪らと結託しました。石閔は大都督石琨らに襄国を攻撃させました。

胡人虐殺

石閔は胡人虐殺を行います。布告により、1日で数万の首級が集まりました。石閔も自ら漢人を率い、胡人を大量に虐殺しました。貴賤・男女・幼老の区別は無く、実に20万人余りが殺害されました。漢人であっても、体格が大きく鼻が高く髭が多かった者は、胡人と間違われて多数殺害されたという。

建国

350年1月、石閔は自らの独断で国号を「衛」に変更し、自らの姓を「李」と改めました。ですが、百官の多くはこれに反発して離反しました。

2月、石鑑を殺害し、石虎の孫28人を皆殺しとしました。

司徒申鍾らは李閔へ帝位に即くよう進めると、李閔は李農に譲ろうとした。だが、李農が固辞したため、自ら皇帝の位に即き、改元して永興とし、国号を大魏と定めました。史書はこれをもって冉魏の成立としています。

3月、李閔は父祖代々の姓である「冉」へ戻し、母の王氏を皇太后と、妻の董氏を皇后としました。石祗もまた冉閔に対抗して襄国において帝位に即きました。

4月、冉閔は斉王李農らを粛清し、東晋へ使者を派遣して共に後趙を討つよう請うたが、東晋朝廷は応じませんでした。

後趙との戦い

4月、石祗は冉閔討伐の兵を興すと、相国石琨に10万の兵を与えて、冉魏を攻撃させました。冉閔は衛将軍王泰に迎撃を命じ、王泰は邯鄲で敵軍を撃破しました。

8月、張賀度らが鄴へ侵攻しました。冉閔は尚書左僕射劉羣に12万の兵を与えて迎撃させ、冉閔自らも8万を率いて軍の後詰となりました。冉魏軍は張賀度軍を破りました。

11月、冉閔は10万を率いて出撃すると、襄国を包囲しました。

351年2月、石祗は前燕皇帝慕容儁と姚弋仲に援軍を要請しました。姚弋仲は子の姚襄に2万8千の騎兵を与えて救援させ、前燕は禦難将軍悦綰に3万の兵を与えて姚襄と合流させました。

3月、冉閔は大敗を喫し、10騎余りに守られてかろうじて鄴へ撤退しました。この戦いで、戦死した将兵は10万にも及び、冉魏は有望な人材を数えきれないほど失ったという。

劉顕討伐

5月、冉魏の兗州刺史劉啓が、鄄城ごと東晋に帰順しました。

7月、劉顕は冉閔から離反して鄴を攻撃したが、冉閔はこれを返り討ちにしました。

8月、冉魏の徐州刺史周成らが東晋に帰順し、廩丘・許昌などの諸城を明け渡しました。

352年1月、劉顕が常山に侵攻すると、冉閔は自ら8千の騎兵を率いて救援に向かい、劉顕に大勝しました。さらに軍を退却させた劉顕を襄国まで追撃しました。襄国を制圧した冉閔は、劉顕とその公卿以下100人余りを処刑し、襄国の宮殿を焼き払い、住民を鄴へ強制的に移住させました。

冉閔の死

4月、慕容恪は冉魏討伐のために軍を起こすと、両軍は魏昌の廉台において激突しました。冉閔は捕らえられ、処刑されました。

滅亡

同月、前燕軍が鄴を包囲すると、皇太子冉智は籠城して徹底抗戦の構えを見せました。

5月、兵糧攻めにより鄴城内では食糧が欠乏し、人肉を食べるところまで追い詰められました。

8月、冉魏の長水校尉馬願・龍驤田香は城門を開いて前燕軍を招き入れました。皇太子冉智らは捕らえられ、薊へ送られました。こうして冉魏は完全に滅亡しました。

もう一度検索