李鍾賛 (1936年生)

李鍾賛（イ・ジョンチャン）

李鍾賛は、1936年上海生まれの韓国の政治家です。軍人、外交官、情報機関員としてのキャリアを経て政界入りし、第五共和国から第六共和国時代にかけて活躍しました。彼の生涯は、韓国現代史の変遷を映し出す鏡と言えるでしょう。

生い立ちと軍人時代

李鍾賛は、1936年4月29日に中国の上海で生まれました。第二次世界大戦終結後の1946年に家族とともに韓国へ帰国し、ソウルに居を構えます。1956年に京畿高校を卒業後、陸軍士官学校に入学。1961年の5・16軍事クーデター後には、国家再建最高会議の機関要員として勤務しました。その後、中央情報部の採用試験に合格し、海外関連業務に従事。1971年に少佐として予備役編入された後は、駐英韓国大使館の参事官として3年間勤務しました。帰国後は情報部の要職を歴任し、総務局長や企画調整室長などを務めました。

政界入りと与党幹部時代

1979年10月26日の朴正煕大統領暗殺事件（10・26事件）後、全斗煥将軍が率いる新軍部勢力が台頭。李鍾賛は、中央情報部企画調整室長として、その能力を認められ、政界入りのきっかけをつかみました。1980年10月には、国家保衛立法会議の委員に任命され、新軍部勢力の与党となる民主正義党（民正党）の創党に尽力。1981年の11代国会議員選挙で初当選を果たし、政界入りを果たします。その後、国家運営委員長と民正党初代院内総務を歴任しました。

民正党内では穏健派に属し、1985年には全斗煥政権が制定しようとした学園安定法案に反対しました。院内総務を退任後は、党内外で基盤を固め、在野人士や反政府知識人との交流を深めるなど、穏健改革派として活躍しました。民主化後の1988年、13代国会議員選挙で3選を果たし、政務第1長官、民正党事務総長に就任。その後、民正党、民主党、共和党が合流して発足した民主自由党（民自党）に入党し、1992年の14代国会議員選挙でも当選しました。

大統領選挙への挑戦と挫折

李鍾賛はかねてから大統領選挙への意欲を示しており、1992年の大統領選挙を前に、大統領候補者選挙への出馬を表明しました。しかし、旧民正党系の有力者が金泳三支持を表明したことで形勢は不利になり、党内選挙で敗北。民自党を離党し、新韓国党を設立しましたが、選挙戦では他の有力候補に埋もれ、鄭周永候補の支持を表明して選挙戦から撤退しました。

野党幹部、情報機関長時代

1995年、李鍾賛は民主党に入党し、金大中が結成した新政治国民会議（国民会議）の副総裁に就任。1996年の15代国会議員選挙では、李明博に敗れ落選しました。しかし、1998年に発足した金大中政権下で国家安全企画部（安企部）部長に任命され、翌年には安企部が改編された国家情報院の初代院長を務めました。2000年の16代国会議員選挙にも出馬しましたが、落選しました。

政界引退後

政界引退後も、李鍾賛は韓国社会に影響を与え続けました。2019年には文在寅大統領との昼食会で日韓関係改善を提言。2023年には光復会会長に就任しました。彼は、激動の韓国現代史を生き抜いた政治家として、その足跡は今もなお人々の記憶に刻まれています。

参考文献

趙甲済『韓国のニューリーダー』黄民基訳（講談社現代新書）
アジア経済研究所編『アジア動向年報』アジア経済研究所
『東亜年鑑』東亜日報

外部リンク

李鍾賛プロフィール（大韓民国憲政会）

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