杏っ子

室生犀星『杏っ子』

『杏っ子』は、室生犀星によって1956年から1957年にかけて『東京新聞』夕刊で連載された長編小説です。原稿用紙800枚に及ぶ大作で、連載終了後には新潮社から単行本が出版されました。この作品は、作者自身の人生と娘への愛情を深く反映した自伝的な要素を含んでいます。

作品概要

物語は、著名な作家である平山平四郎と、その娘・杏子の人生を軸に展開されます。前半では、私生児として生まれた平四郎が文学の道を志し、結婚して娘をもうけるまでが描かれています。後半では、成長した杏子が疎開先で出会った男性と結婚しますが、家庭内暴力に苦しみ、離婚に至るまでの苦難が描かれます。この物語は、室生犀星自身と彼の娘である室生朝子をモデルとしており、親子の深い絆と、社会の厳しい現実を映し出しています。

映画化

1958年には、本作を原作とした映画が東宝によって製作・配給されました。モノクロ作品で、香川京子が杏子役、山村聰が平四郎役を演じています。監督は成瀬巳喜男が務め、映画は原作の持つ深い人間ドラマを忠実に映像化しています。

キャスト

平山杏子：香川京子
平山平四郎：山村聰
平山りえ子：夏川静江
平山平之助：太刀川洋一
漆山亮吉：木村功
漆山すみ子：中北千枝子
山本りさ子：三井美奈
八木原俊雄：中村伸郎
田山茂：小林桂樹
菅猛雄：加東大介
村井えん子：賀原夏子
鳩井夫人：沢村貞子
鳩井息子：佐原健二
佐藤博士：林寛
吉田三郎：千秋実
吉田さち子：三田照子
岡田：藤木悠
伊島：土屋嘉男
杏子の友人：河美智子

スタッフ

製作：清水雅
企画：森岩雄
原作：室生犀星
脚本：田中澄江、成瀬巳喜男
音楽：斎藤一郎
撮影：玉井正夫
美術：中古智
録音：藤好昌生
照明：石井長四郎
編集：大井英史
チーフ助監督：川西正純
製作担当者：島田武治
整音：宮崎正信
現像：東宝現像所
プロデューサー：田中友幸
監督：成瀬巳喜男

同時上映

『大笑い捕物帖』
脚本：新井一／監督：青柳信雄／主演：一龍斎貞鳳／東京映画作品

テレビドラマ化

1962年には、日本テレビ系列でテレビドラマ化されました。全70回にわたって放送され、松村達雄、室生あやこ、朝風みどり、武内亨、鳳八千代などが出演しました。脚本は池田一朗、演出は蒲生順一が担当しました。

出演者

松村達雄
室生あやこ
朝風みどり
武内亨
鳳八千代
ほか

スタッフ

脚本：池田一朗
演出：蒲生順一
制作：NTV

受賞

『杏っ子』は、1958年に読売文学賞を受賞しており、その文学的な価値が高く評価されています。

外部リンク

映画版関連 - allcinema
* 映画版関連 - KINENOTE

もう一度検索