東シベリア・太平洋石油パイプライン

東シベリア・太平洋石油パイプライン（ESPOパイプライン）の詳細

東シベリア・太平洋石油パイプライン（ESPOパイプライン）は、ロシア産の原油をアジア太平洋地域へ輸送するための大規模な石油パイプラインです。このパイプラインは、ロシアのエネルギー戦略において重要な役割を果たしており、日本、中国、韓国などへの原油供給を担っています。

建設の経緯

ESPOパイプラインの建設は、1990年代後半に民間企業ユコスが中国への石油パイプライン敷設を計画したことに端を発します。これに対抗して、国営企業トランスネフチがより大規模なパイプライン計画を発表し、最終的にロシア政府が両者の計画を統合してESPOパイプラインを建設することを決定しました。2003年、ロシア政府はユコスとトランスネフチの協力を得て、このプロジェクトを開始しました。

建設工事は2006年に始まり、2009年12月に第1期工事（ESPO-1）が完了しました。この区間は、イルクーツク州タイシェットからスコボロディノまでを結んでいます。その後、中国への支線が建設され、2011年1月から中国への原油供給が開始されました。第2期工事（ESPO-2）は、スコボロディノからコズミノ港までを結ぶもので、2014年に完了しました。

ルート

ESPOパイプラインの全長は4,857kmに及びます。主要なルートは以下の通りです。

タイシェット - カザチンスコエ - スコボロディノ - コズミノ港
タイシェット - スコボロディノ間: 第1期工事 (ESPO-1) として建設
スコボロディノ - コズミノ港: 第2期工事 (ESPO-2) として建設
スコボロディノ - 中国大慶市: 中国向けの支線

環境保護団体の抗議運動を受け、当初のブリヤート共和国通過ルートは、バイカル湖の北側を通過するルートに変更されました。

技術的特徴

当初、パイプラインの直径は1,220mmで、1日あたり60万バレルの輸送能力でしたが、将来的に1日あたり160万バレルまで拡張される予定です。中国支線への輸送量は1日あたり30万バレルです。

パイプラインには32カ所のポンプステーションが設置されており、そのうち13カ所には総量267万立方メートルの貯油槽があります。また、ポンプステーションへの電力供給のため、サハ共和国オリョークミンスクに火力発電所が建設されました。コズミノ港には35万立方メートルの貯油槽があり、積出能力は1日あたり30万バレルです。

建設コスト

第1期工事の建設費用は122億7千万ドル、輸出ターミナル建設費用は17億4千万ドルに達しました。

中国支線

中国への支線は、スコボロディノからアムール川までの64kmをトランスネフチが、アムール川から大慶市までの992kmを中国石油天然気集団が建設しました。この支線は、年間1500万トンの原油を20年間供給する契約に基づいており、中国開発銀行からの低利融資によって実現しました。

2017年5月には、このパイプラインを通じた中国の原油輸入量が1億トンを超え、同年11月には第2ルートも完成し、年間3000万トンの供給が可能になりました。

原油供給源

ESPOパイプラインへの原油供給は、主に西シベリアの油田から既存のパイプライン経由でタイシェットまで輸送されます。タイシェットでは、東シベリア産の原油も供給されます。

問題点

ESPOパイプラインの建設と運営には、いくつかの問題も発生しました。

横領疑惑: 2010年、パイプライン建設費用のうち40億ドルが横領されたとの疑惑が浮上しましたが、トランスネフチ社はこれを否定しています。
中国代金未払い問題: 2011年、中国が原油代金を一方的に減額して支払うという問題が発生しました。価格交渉の結果、ロスネフチが値引きを提示することで合意に至りました。

今後の展望

ESPOパイプラインは、ロシアからアジア太平洋地域へのエネルギー供給において、今後も重要な役割を果たし続けると考えられます。パイプラインの拡張や効率化により、さらに安定した原油供給が期待されています。

参考文献

劉旭「東シベリア～太平洋石油パイプライン建設と資源開発」（PDF）『スラヴ研究』No. 57、北海道大学スラブ研究センター、2010年。
本村真澄「拡大する北東アジアのエネルギーフロー」（PDF）『石油・天然ガスレビュー Vol.46 No.2』、JOGMEC、2012年3月。

関連情報

カザフスタン・中国石油パイプライン
中央アジア・中国パイプライン
シベリアの力
The Oil pipeline system Eastern Siberia-Pacific Ocean, Transneft website

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