東メボン

東メボン：アンコール遺跡群に眠るヒンドゥー寺院

東メボン（East Mebon）は、カンボジアのアンコール遺跡群に位置する、10世紀に建立されたヒンドゥー教寺院です。クメール王朝の王、ラージェンドラヴァルマン2世の治世（944年 - 968年）に建設され、当時は東バライ貯水池の中央に位置する人工島にありました。現在、貯水池は干上がっていますが、その歴史的な姿を今に伝えています。

位置と配置

東メボンは、ヒンドゥー教のシヴァ神と、王の両親に敬意を表して捧げられました。寺院の配置は、クメール建築における配置と方位に対する思想を反映しています。南北を軸としており、ラージェンドラヴァルマン2世の主要な寺院であるプレ・ループが、東バライのすぐ南、約1.2キロメートルの場所に建てられています。さらに、東メボンの東西軸上には、ラージェンドラヴァルマン2世の治世中に建設された王宮寺院ピミアナカスが、西に約6.8キロメートルの位置にあります。

建築様式と構成

プレ・ループの様式を受け継いでいる東メボンは、952年に奉献されました。三つの周壁と、ラテライトで造られた三層構造の基壇を持ち、砂岩、煉瓦、ラテライト、化粧漆喰など、クメール建築で用いられる耐久性の高い資材が使用されています。

基壇は東西126メートル、南北121メートルの規模で、最上部には中央の祠堂があります。この祠堂は煉瓦造りで、まぐさ、偽扉、柱の一部は砂岩で造られています。かつては化粧漆喰が鋲で固定されていた跡も見られます。基壇の角には、4基の小塔が配置されています。

彫刻と装飾

東メボンの彫刻は、その多様性と卓越した技巧で知られています。基壇の一層目と二層目の角には、高さ2メートルの独立したゾウの彫像が配置されています。まぐさの彫刻は特に洗練されており、インドラ神が三つの頭を持つ象アイラーヴァタに乗る姿や、シヴァ神が聖牛ナンディンに乗る姿など、宗教的な場面が描かれています。

かつての姿

寺院の上層から外を見ると、かつて寺院を囲んでいた広大な水の広がりを想像することができます。基部にある4つの桟橋は、かつて寺院へは船で渡っていたことを物語っています。東メボンは、かつてのアンコール文明の繁栄を偲ばせる重要な遺跡の一つです。

参考文献

石澤良昭『アンコール・ワット』講談社〈講談社現代新書〉、1996年。ISBN 4-06-149295-0。
Freeman, Michael and Jacques, Claude. Ancient Angkor. River Books, 1999. ISBN 0-8348-0426-3.
Rooney, Dawn. Angkor. Airphoto International Ltd. 2002.
Rooney, Dawn F. (2011). Angkor: Cambodia's Wondrous Khmer Temples (6th ed.). Odissey. ISBN 978-962-217-802-1

関連項目

アンコール遺跡
東バライ
西メボン
プレ・ループ

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