東ルメリ自治州

東ルメリ自治州の概要

東ルメリ自治州（ひがしルメリじちしゅう）は、1878年から1885年にかけてオスマン帝国の地方政府の一部として存在し、現在のブルガリア南部に位置する地域でした。この自治州は、しばしば東ルメリアとも呼ばれ、学校や宗教、文化の多様性を誇るエリアでした。

歴史的背景

この自治州の設立は、露土戦争の講和条約であるサン・ステファノ条約によるもので、ブルガリア公国が誕生する契機となりました。しかし、国際情勢の変化により、1878年のベルリン会議でブルガリアは3分割され、その一部として東ルメリ自治州が設立されました。この結果、ブルガリアの南部はオスマン帝国に返還されることとなり、バルカン山脈を境に北部はブルガリア自治公国、南部は東ルメリ自治州として分けられました。

自治州の州都はプロヴディフに定められ、州の境界や国境の画定作業は1879年までに完了しました。総督はベルリン条約締結国の承認を得てスルタンから任命され、任期は5年で、任命されるのは主にキリスト教徒でした。治安維持のためには独自の憲兵隊や民兵を設置し、オスマン軍は平時には国境沿いの要塞以外には駐屯できないと定められました。ただし、治安が不安定となった場合は、総督がオスマン軍の進駐を要請することが許可されていました。

住民構成と政治情勢

東ルメリ自治州の住民の大多数はブルガリア人のキリスト教徒でしたが、トルコ人やポマク（ムスリム）、ギリシャ人も居住していました。このため、自治州内では民族の人口比に基づく議会が設置され、憲兵隊の採用も行われました。しかし、実権を握っていたのはブルガリア人であり、彼らは地域の自治州が設置されると、すぐにでもブルガリア自治公国への併合を求める声が大きくなりました。

1884年に就任した総督ガヴリル・クラステヴィチは、ブルガリア併合に反対する立場を表明していました。その背景には、当時のブルガリア自治公国が公と議会の激しい対立による政治的混乱であることから、急いで併合を進めることが危険だと考えたためでした。とはいえ、彼の意見は少数派であり、1885年2月には「ブルガリア秘密中央革命委員会」が結成され、勢いを増すと、州内のブルガリア人民兵とともに蜂起を起こしました。

併合への道

この蜂起の結果、総督は追放され、自治州内の支配権はブルガリア人の手に渡りました。その後、ブルガリア公アレクサンダルはプロヴディフに入り、ブルガリア自治公国が自治州の併合を正式に宣言しました。しかし、これに対し、併合に反対するセルビアとの間で戦争が勃発する事態となります。しかし、ブルガリアがこの戦争で勝利を収めたことにより、併合は既成事実として受け入れられることになりました。

1886年には、ブカレスト条約が締結され、ブルガリア公が自治州の総督も兼任するとの形で、事実上の併合が承認されました。ただし、名目上は自治州は依然存在し、ブルガリア公による総督の任期は5年ごとに再任されるという条件がつけられました。これにより、再任時に承認を巡る外交問題が発生することがありました。

その後、1908年にブルガリアがオスマン帝国からの独立を宣言すると、名実ともに東ルメリ自治州は消滅し、歴史の一幕を閉じることとなりました。

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