東京第一フィルム

東京第一フィルム株式会社（とうきょうだいいちフィルム）は、1963年3月に設立され、主に1970年代にかけて活動した日本の映画配給会社です。後の1976年5月1日には第一フィルム株式会社と社名を変更しました。

この会社の歴史は、1949年2月に設立されたイタリア映画の輸入配給を手掛けていたイタリフィルムに遡ります。イタリフィルムは1962年3月、約1億円の負債を抱え、映画業界で多角的な経歴を持つ曾我正史氏に営業権を譲渡しました。イタリフィルム創業時からの代表であったジュリアーナ・ストラミジョーリ氏はこれを機に引退し、曾我氏が新たな会社として1963年7月に立ち上げたのが東京第一フィルムです。

曾我正史氏は、戦前は振津嵐峡のペンネームで映画監督として知られ、戦後は大映の専務取締役を務め、1958年には大映を離れて日映を設立するなど、日本の映画界で重要な役割を果たした人物です。曾我氏が会長を務めていたニッポンシネマコーポレーション（NCC）時代にイタリフィルムと共同配給を行ったことがあり、このNCCは1961年7月にヘラルド映画株式会社と合併し、現在の角川映画の前身となる日本ヘラルド映画株式会社となりました。

東京第一フィルムは、主にイタリア映画を中心に、アメリカ映画など各国の作品を日本に輸入・配給しました。活動時期にあたる1960年代から1970年代は、イタリア映画が「イタリア式コメディ」からサスペンスやホラー要素の強い「ジャッロ」へと多様化していく過渡期であり、同社はその変化を日本の観客にリアルタイムで紹介する役割を担いました。

活動中には法的なトラブルにも見舞われました。1971年に配給したイギリス映画『小さな目撃者』のタイアップ広告を巡り、東京第一フィルムと同社と共同で広告を出したロッテは、主演子役のマーク・レスターおよび協同企画から訴訟を起こされました。この裁判は、1976年9月29日に東京地方裁判所で同社らに対して謝罪広告の掲載を命じる判決が下されています。

奇しくも裁判の判決が下される年の5月1日、同社は臨時株主総会の決議を経て、社名を第一フィルム株式会社に変更しました。社名変更後、確認できる最後の公開作品は1976年10月23日公開の『セレモニー 結婚式』であり、これ以降の同社の具体的な活動状況については、現在のところ詳細な情報が得られていません。

また、改称前後には、最終的に日本公開が実現しなかった配給企画も存在したようです。例えば、1976年1月にフランスで公開されたセルジオ・ゴッビ監督作『ブロンディー』の配給権を取得し、原作小説を刊行していた東京創元社に映画関連資料を提供しています。東京創元社はこれを受けて、原作本のカバーを映画版ポスターに差し替えて再版しましたが、残念ながら映画本編が日本で公開されることはありませんでした。

キネマ旬報映画データベースなどを参照すると、東京第一フィルムおよび第一フィルムが日本国内で配給した多くの作品が確認できます。そのラインナップは、イタリア映画を基盤としつつも、イギリス、フランス、アメリカ、ドイツ、旧ソビエト連邦、スウェーデン、スペイン、ギリシャ、イギリス領香港など、多様な国の作品を含んでいました。ジャンルも幅広く、一般的なドラマやコメディ、サスペンスに加え、当時の流行を反映したモンド映画（例：『世界の熱い夜』）、マカロニ・ウェスタン（例：『荒野の1ドル銀貨』）、ゴシック・ホラー（例：『白い肌に狂う鞭』）、スパイアクションなど、多岐にわたる作品群を通じて、日本の映画ファンに世界の多様な映画文化を紹介する役割を果たしました。

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