東京芸術劇場 (劇団)

東京芸術劇場は、第二次世界大戦後の混乱期に、演劇界の再建を目指して設立された劇団です。劇作家の久保栄が中心となり、滝沢修（旧新協劇団）、薄田研二（旧新築地劇団）といった、当時を代表する演劇人が集結しました。顧問には、演出家の土方与志が迎えられ、演劇界の注目を集めました。

1945年12月14日に結成された東京芸術劇場は、翌1946年3月には早くも有楽座でヘンリック・イプセンの戯曲「人形の家」を上演し、観客に衝撃を与えました。同年9月には、新協劇団と合同でマクシム・ゴーリキーの「どん底」を上演し、その質の高い舞台は多くの観客を魅了しました。

しかし、東京芸術劇場は、その活動期間は短く、1947年3月に劇団は分裂します。この分裂の背景には、戦争責任に対する考え方の違いがあったとされています。久保栄は、自身の戦争責任を深く掘り下げた「林檎園日記」を帝国劇場で上演しましたが、この作品が劇団内の意見の対立を招いたと言われています。

分裂後、滝沢修は、宇野重吉らと共に民衆芸術劇場（第一次民藝）を結成し、新たな演劇運動を始めます。一方、薄田研二は、古巣の新協劇団に合流し、それぞれの道を歩むことになりました。

東京芸術劇場は、その短い活動期間にも関わらず、戦後の演劇界に大きな影響を与えた劇団として、その名が記憶されています。特に、その解散と、そこから生まれた民衆芸術劇場の設立は、日本の演劇史における重要な出来事として、今日まで語り継がれています。

東京芸術劇場は、戦後の演劇界の黎明期に、理想を掲げた演劇人たちが集い、新たな演劇を創造しようとした、その情熱と苦悩が凝縮された場所であったと言えるでしょう。

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