東加納町

東加納町

東加納町（ひがしかのうちょう）は、かつて岐阜県稲葉郡に存在した歴史ある町です。現在の岐阜市加納地域の一部にあたり、江戸時代には中山道の宿場町である加納宿、そして加納藩の城下町として栄えた加納の、主に城の北東側に位置していました。

歴史

かつてこの地は美濃国厚見郡に属していました。江戸時代の初めにあたる1601年（慶長6年）、徳川家康の命によって主要街道である中山道が整備され、その宿場町として加納宿が置かれました。同年には、それまで美濃国の中心であった岐阜城が破却され、新たに加納城が築城されました。加納城は加納藩の藩主の居城となり、これにより加納は中山道の宿場町としての機能に加え、加納藩の城下町としての性格も併せ持つことになります。江戸時代を通じて、加納はこの二つの特徴を持つ重要な拠点として発展し、加納藩の領地の一部でした。

明治維新を迎えた1868年（明治元年）の時点では、加納宿は24の町丁によって構成されていました。具体的には、本町1丁目から9丁目、加納1丁目から5丁目、加納長刀堀、天神町、魚屋町、田町、七軒町、広江町、新町、柳町、安良町、八幡町といった町々です。これらの町丁のうち、本町1丁目から9丁目、天神町、魚屋町、田町、七軒町、広江町、新町、柳町、安良町、八幡町といった地域は、1883年（明治16年）に合併し、後の東加納町の基礎となる地域を形成しました。そして、1889年（明治22年）7月1日、町村制の施行に伴い、これらの地域をもって正式に東加納町が発足しました。

その後、1897年（明治30年）4月1日には、行政区画の再編が行われ、厚見郡、各務郡、方県郡の一部が合併して新たに稲葉郡が設置されました。同日、東加納町は、隣接する西加納町および下加納村と合併し、改めて加納町が発足したことにより、東加納町はその歴史に幕を閉じ、廃止されました。

地理・文化・交通

東加納町が存在した地域は、現在も加納の歴史や文化を色濃く残しています。教育機関としては、地域に根差した加納小学校（現在の岐阜市立加納小学校）があります。交通においては、東海道本線の加納駅が町の近くに位置し、地域の重要な交通拠点でした。

この地域および周辺には、かつての繁栄を物語る多くの旧跡や観光スポット、特産品が存在します。中山道の宿場町としての面影を残す加納宿、国の史跡に指定されている加納城跡は、当時の政治・経済の中心であったことを今に伝えています。また、加納天満宮や加納八幡神社といった神社も、地域の信仰の中心として歴史を刻んでいます。岐阜和傘は、加納の地場産業として知られ、伝統的な美しさを今に伝えています。

東加納町は短い期間の存在でしたが、江戸時代の加納宿・城下町から近代の行政区画へと移行する歴史的な過程において、重要な役割を果たした町です。その名残は、現在の岐阜市加納地区の地名や街並みに引き継がれています。

参考文献

『市町村名変遷辞典』東京堂出版、1990年
『岐阜県町村合併史』、1961年
* 『角川日本地名大辞典21岐阜県』角川書店、1980年

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