東北九城

東北九城とは

東北九城（とうほく きゅうじょう）は、12世紀初頭の高麗が、北方の女真族を圧迫し築いた9つの城を指します。これは、江東六州と並び、高麗の北進政策を象徴する出来事として知られています。

背景

契丹との戦いの後、高麗は北からの侵攻に備え、鴨緑江から咸鏡道永興にかけて千里長城を築きました。その北東には女真族が居住しており、高麗からは「東蕃」と呼ばれていました。女真族は統一された政治集団を形成しておらず、いくつかの部族に分かれていましたが、完顔部が勢力を拡大し、高麗に服属していた女真族の村落を攻撃するようになりました。

高麗は林幹らを派遣して女真族を討伐しましたが失敗。尹瓘を派遣しましたが、これも大敗に終わり、和約を結んで帰還しました。この敗北により、千里長城外の女真族の村落は完顔部の支配下に入りました。

別武班の編成と九城の築城

尹瓘は粛宗に建議し、正規軍とは別に別武班を編成することを決定しました。別武班は、騎兵の神騎軍、歩兵の神歩軍、僧兵の降魔軍からなる軍団でした。粛宗の意志を継いだ睿宗は、尹瓘を元帥、呉延寵を副元帥とし、別武班を含む17万の大軍を率いて女真征伐に向かわせました。

1107年、高麗軍は135の村落を占領し、5000人を捕虜とする戦果を挙げました。尹瓘は、占領した咸州を始め、福州、英州、吉州、雄州、通泰鎮、真陽鎮、崇寧鎮、公嶮鎮の9城を築き、南方の6万9000戸余りを移住させました。しかし、これらの城の位置は、現在も正確には特定されていません。

九城の位置に関する諸説

九城の位置については、以下の3つの説があります。

咸関嶺以南から定平以北の咸興平野一帯とする説
吉州または摩雲嶺以南から定平までの咸鏡南道一帯とする説
* 公嶮鎮を豆満江以北とし、それより南から定平までの咸鏡道一帯とする説

九城の放棄とその後

高麗が築いた九城は、長く維持することができませんでした。女真族は生活の基盤を失い、完顔部の烏雅束を中心に、高麗に侵攻し、九城の返還を要求しました。高麗は九城の維持に莫大な費用を費やし、人的被害も大きかったため、1109年、九城を女真族に返還し、軍隊と民衆を撤収させました。

その後、曷懶甸地域を確保した完顔部は勢力を拡大し、阿骨打が金を建国しました。金は高麗に対し、兄弟の盟約を結ぶよう要求し、その後、契丹を滅ぼし、宋を圧迫し、中原の覇者となりました。金は高麗に君臣関係を迫り、高麗は事大の礼を取ることを決定しました。この決定に対する不満は、後に妙清の乱へと繋がります。

東北九城は、高麗の北進政策の象徴であると同時に、その限界を示すものでもありました。また、その放棄は、東アジアの国際関係に大きな影響を与えることになったのです。

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