東国史略 (権近)

『東国史略』についての詳細

『東国史略』（とうごくしりゃく、朝鮮語: 동국사략）は韓国の古代史に関する重要な歴史書で、高麗の末期及び李氏朝鮮の初期に編纂されました。主に河崙、権近らの学者が中心となって作られたこの書物は、檀君朝鮮から後三国時代までの朝鮮半島の歴史を網羅しています。この歴史書は、具体的には8冊から構成されているとされているものの、現存するのは巻三と四の1冊のみとなっているのが特徴です。

編纂とその背景

『東国史略』は、1402年に太宗の指示のもとに、河崙、権近、李詹が共同で『三国史』の編纂を開始し、翌年の1403年には完成を見ました。この際、一般には権近の編集によるものとされています。編纂にあたっては、既存の『三国史記』や『三国遺事』、さらには『冊府元亀』や『隋書』などが参照されており、当時の歴史的文献を活用したことが伺えます。

作品の特徴と内容

『東国史略』は、その記述スタイルに幾つかの特徴があります。第一に性理学的名分論の見地から編集されているため、新羅を三国の中心に据えた内容になっています。また、編年体の構成が取られており、新羅の年号に基づいて、次いで高句麗、百済の順に歴史的事件が記述されています。この新羅中心の視点は、新羅の歴史的正当性を強調するものであり、後の歴史書にも影響を与える要因となったと考えられています。

ただし、『東国史略』では韓国の他の地域に関する記載、例えば楽浪、夫余、帯方、沃沮、伽耶、渤海などの国々についての言及は少なく、主に新羅に焦点が当てられている点が指摘されています。

歴史的背景とその影響

新羅を主人公とするこの記述は、李氏朝鮮時代の国史認識に強い影響を持ち、国の正当性を新羅に求める論調は、李氏朝鮮の行政や教育の中で重視されていました。このように『東国史略』は、ただの歴史書という枠を超えて、当時の政治的背景や文化の中でおおいに機能し、歴史学の発展にも寄与したのです。

総評

『東国史略』は古代朝鮮の歴史を理解する上で欠かせない資料であり、当時の学者たちの思想や歴史観を示す貴重な文献です。残念ながらその大部分は消失してしまっていますが、今でも高麗末期から李氏朝鮮初期にかけての歴史を知るための大切な手掛かりを提供してくれています。

もう一度検索