東山御物

東山御物：足利義政が集めた美の粋

東山御物（ひがしやまぎょもつ/ひがしやまごもつ）は、室町幕府8代将軍・足利義政によって収集された、絵画、茶器、花器、文具などのコレクションを指します。「東山」の名は、義政が山荘を構えた東山に由来しますが、その中には歴代将軍から引き継がれた品々も多く含まれています。江戸幕府の収集品である「柳営御物」に対して、室町幕府歴代将軍の収集物全体を指して「東山御物」と呼ぶこともあります。

東山御物の歴史

明治以前は、「東山殿御物」・「東山殿之御物」・「東山殿御所持」などと呼ばれていましたが、「東山御物」という4文字表記が使われるようになったのは明治以降のことです。この名称が広く普及したのは、創元社が1936年に発行した『茶道全集』の影響が大きいと言われています。

義政の祖父である足利義満や、父の足利義教は、日明貿易を通じて宋や元などの中国絵画（唐物）を積極的に収集しました。これらの唐物には、「天山」や「道有」などの鑑蔵印が押されています。義政の時代になると、唐物の管理や鑑定は同朋衆の能阿弥が行い、「御物御画目録」（280幅、東京国立博物館所蔵）を編纂しました。この目録では、材質や形態別に分類され、画家や画題、賛者などが詳細に記録されています。能阿弥は他にも、東山御物について記述した『君台観左右帳記』を著しています。

しかし、応仁・文明の乱によって東山御物の一部は散逸し、諸大名に下賜されたり、幕府の財政難のために土倉に売却されたりして、地方へと流出しました。その中には、行方不明になってしまったものも少なくありません。安土桃山時代に入ると、義政は「茶道の祖」として茶人たちから崇敬されるようになり、東山御物の茶器が特に重んじられるようになりました。

現存する主な東山御物

現在に伝わる東山御物の多くは、国宝や重要文化財に指定されています。以下はその代表的なものです。

国宝
夏景山水図（伝徽宗筆、久遠寺所蔵、東京国立博物館寄託）
秋景山水図（伝徽宗筆、金地院所蔵）
冬景山水図（伝徽宗筆、金地院所蔵）
出山釈迦図・雪景山水図（梁楷筆、東京国立博物館蔵）
重要文化財
寒山拾得図（伝顔輝筆、東京国立博物館蔵）
紙本墨画布袋図（個人蔵）
紙本墨画老子像（牧谿筆、岡山県立美術館蔵）
草虫図（東京国立博物館蔵）
竹虫図（伝趙昌筆、東京国立博物館蔵）
梅花双雀図（伝馬麟筆、東京国立博物館蔵）

これらの他にも、多くの東山御物が大切に保存されており、日本の美術史において重要な位置を占めています。

まとめ

東山御物は、足利義政の美意識と、室町幕府の文化を象徴する貴重なコレクションです。応仁の乱などを経て散逸したものも多いですが、現存する品々は日本の美意識を今に伝える文化遺産として、高く評価されています。

参考文献
芳賀幸四郎「東山御物」『国史大辞典 11』（吉川弘文館 1990年）ISBN 978-4-642-00511-1
戸田勝久「東山御物」『日本史大事典 5』（平凡社 1993年）ISBN 978-4-582-13105-5
佐藤豊三「東山御物」『日本歴史大事典 3』（小学館 2001年）ISBN 978-4-09-523003-0

外部リンク
東山御物 - ジャパンサーチ

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