同朋衆

同朋衆（どうぼうしゅう）

同朋衆とは、室町時代以降に将軍の側近として仕え、雑務や芸能を司った人々のことです。一遍が開いた時衆教団に、芸能に秀でた者が集まったことが起源とされています。阿弥衆、御坊主衆とも呼ばれていました。慶応2年（1866年）に廃止されています。

起源と特徴

同朋衆は時宗を母体としているため、阿弥号を名乗るのが通例です。しかし、阿弥号を持つ者が必ずしも時宗の僧侶であるとは限りません。観阿弥、世阿弥や、江戸幕府における同朋衆がその例です。

制度と芸能との関わり

鎌倉時代末期から合戦に同行する陣僧の中に時衆の僧が多く、武家との結び付きが強まりました。平時には芸能を活かして武士の慰めとし、同時に側近や取次ぎ人としての役割も果たしました。時衆による踊り念仏は民俗的な歌舞に結びつきやすく、一遍や遊行上人二世真教、三世智得らが歌人であったことも影響しています。時衆における遊行は室町幕府から関所自由通過を許されており、時衆に加わる手続きも簡単だったため、芸能を生活の手段とする人々が時衆集団に加わるようになりました。

連歌師の頓阿、周阿は時衆僧ではありませんが、四条道場（金蓮寺）に所属していました。万葉集を研究した由阿は藤沢道場（清浄光寺）の阿弥でした。

阿弥衆には、能面師の増阿、立花の立阿、文阿がいました。南北朝時代には四条道場や六条道場（歓喜光寺）などで立花が行われていました。時衆の寺の阿弥衆は遊行によって地方に連歌や立花などの芸能を広めました。地方においては、筑前の時衆寺院金台寺の職人達が芦屋釜の制作に携わりました。

制度としての起源は、細川頼之が執事となって6人の法師を足利義満に仕えさせたことに始まります。同朋は猿楽や庭園作りなどの芸能を司り、唐物奉行として、唐物、唐絵の目利き、表装、出納などを行いました。義政の代には、能阿弥による唐物の東山御物の制定などが行われました。能阿弥、芸阿弥、相阿弥の三代は、書院座敷飾りの様式を創案し、絵画では「国工」「国手」とも呼ばれ、連歌では宗匠と呼ばれるほどでした。竜安寺や大仙院の石庭は相阿弥の作と伝えられ、東山文化の形成に大きな影響を与えたと考えられています。

当時の同朋衆は阿弥号を持ち剃髪し、立花、茶湯、香、連歌などの一芸を持っていました。東山殿で義政の周辺にいて、無聊を慰めたり、唐物選びや座敷飾りをして客人との遊興の場を作ったりしていました。この東山殿には、能阿弥から立花や唐物目利きを学んだ村田珠光も訪れました。作庭に活躍した善阿弥は河原者（山水河原者）であり、同様に作庭に従事した多くの河原者がいました。

織田信長、豊臣秀吉にも同朋衆は仕えました。秀吉の継父である竹阿弥は、信長の父信秀の同朋衆であったと伝えられています。徳川家では、天正8年（1580年）に谷新六郎正次（後に内田姓）が全阿弥と改名して同朋衆として徳川家康に仕えたのが始めとされています。江戸幕府においては若年寄の配下で江戸城内の管理に携わり、奥坊主衆を監督指揮しました。

同朋衆の語源は、仏教者の「同業同朋」から来たものとされていますが、将軍近侍の「童坊」から来たという説もあります。

史料に現れる同朋衆

元弘3年（1333年）に鎌倉幕府軍の斎藤新兵衛入道らが千早城を攻めた際には、200人もの時衆がこれに従っていたと「正慶乱離誌」に記述があります。また、延元3年（1338年）に新田義貞が越前国藤島で戦死した時には、時衆の僧侶8人が現れ、義貞の遺骸を輿に載せて往生院（長崎往生院称念寺）へ運んだと西源寺本「太平記」にあります。

「大塔物語」では、信濃国へ下向する小笠原長秀の行列の中に、連歌、早歌、物語、舞、歌など多芸の頓阿弥という人物がいたと記されています。京都の若宮八幡宮社所蔵の絵巻物「足利義持若宮八幡宮社参図絵巻」には、行列に同行する3人の法体姿が描かれており、同朋衆と見られています。

主な同朋衆

毎阿弥 （茶道）
能阿弥 （唐物、茶道、水墨画、連歌、立花）
芸阿弥 （唐物、茶道、水墨画）
相阿弥 （唐物、茶道、水墨画、立花、作庭）
観阿弥 （猿楽能）
世阿弥 （猿楽能）
音阿弥 （猿楽能）
善阿弥 （作庭、連歌）
重阿弥 （碁）
拾阿弥
千阿弥 - 千利休の祖父（『千利休由緒書』）
志野宗信 (香道)

関連項目

茶道
香道
茶坊主
同朋町（神田同朋町など）

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