東山駅 (北海道)

東山駅

東山駅（ひがしやまえき）は、かつて北海道茅部郡森町字駒ケ岳に存在した、北海道旅客鉄道（JR北海道）函館本線の鉄道駅です。電報略号は「ヒヤ」、廃止時の駅番号は「H64」でした。北海道渡島総合振興局管内に位置し、急勾配が続く区間に設けられた歴史を持つ駅でした。

歴史

東山駅が設けられた背景には、函館本線の駒ヶ岳駅から森駅にかけての厳しい地形がありました。この区間、特に駒ヶ岳駅から森駅へ下る間は、最急16‰（パーミル）という急勾配が連続し、線路は3段に迂回しながら海岸沿いの森町へと至ります。この難所において、途中での列車の行き違いや待避ができる設備は、1913年（大正2年）に開設された姫川信号場しかありませんでした。太平洋戦争が始まり、輸送量が大幅に増加すると、この単一の交換設備では対応が困難となります。これを受けて、輸送力強化策として、スイッチバック方式を採用した信号場を増設することになり、1943年（昭和18年）2月26日に駒ヶ岳駅と姫川信号場の間に東山信号場が開設されました。この信号場は、森町史によれば当時から旅客の乗降も扱っていたとされています。

しかし、戦局が終盤に差し掛かった1945年（昭和20年）、軍川駅（現在の大沼駅）から森駅の間には、勾配を避けるための新しいルートとして渡島砂原駅を経由する通称「砂原支線」が開業しました。これにより、特に重量のある貨物列車などが上り勾配を回避するために砂原支線経由で迂回するようになります。こうした輸送状況の変化に伴い、東山信号場は戦後、その信号場としての主要な役割を終えることとなりました。1949年（昭和24年）8月1日には、翌年に同様に設置された森川信号場と共に、信号場としては廃止されます。

信号場としての機能は失われたものの、東山信号場には引き続き乗降設備が残され、「東山仮乗降場」（鉄道管理局設定）として旅客扱いが継続されました。そして、1987年（昭和62年）4月1日の国鉄分割民営化に伴い、北海道旅客鉄道（JR北海道）に承継されると同時に、正式な旅客駅である「東山駅」に昇格しました。その後も旅客営業は続けられましたが、駅周辺の過疎化の進行などにより利用客は極めて少ない状況が続きました。最晩年には、2011年から2015年の調査で平均乗降人員が「1名以下」となるなど、厳しい状況に置かれます。JR北海道は維持困難な駅の廃止を進める中で、2016年（平成28年）6月に他の駅とともに東山駅の廃止意向を町へ伝え、議論の末、2017年（平成29年）3月4日のダイヤ改正をもって、駅としての歴史に幕を閉じました。

年表

1943年（昭和18年）2月26日：国有鉄道函館本線の東山信号場として開設。旅客扱いも行っていたとされる。
1949年（昭和24年）
6月1日：日本国有鉄道法施行により、国鉄に継承。
8月1日：信号場として廃止。旅客の乗降は東山仮乗降場（局設定）として継続。
1987年（昭和62年）4月1日：国鉄分割民営化に伴い、JR北海道に継承。同時に東山駅として駅に昇格。
1990年（平成2年）3月10日：営業キロを設定。
2000年（平成12年）3月11日：快速「アイリス」下り列車廃止に伴い、普通列車のみの停車駅となる。
2006年（平成18年）3月18日：ダイヤ改正により、一部普通列車が通過し、停車列車が4往復に減少。
2007年（平成19年）10月1日：駅ナンバリング（H64）を実施。
2016年（平成28年）6月2日：JR北海道から森町に対し、2017年3月での廃止意向が報道される。
* 2017年（平成29年）3月4日：利用者減少のため、廃止。

駅構造

東山駅は、その歴史の中で構造が大きく変化しました。信号場時代にあたる1949年（昭和24年）8月以前は、急勾配に対応するためのスイッチバック式の配線を有していました。特徴的だったのは、通常の本線に対して点対称に設けられる待避線が、上下線用ともに本線の反対側（構内南側）に配置されていた点です。信号場廃止後、仮乗降場および駅として運用されていた期間（1949年8月以降から廃止まで）は、単式ホーム1面1線を持つシンプルな地上駅でした。ホームは線路の北側（函館方面に向かって右手、旭川方面に向かって左手側）に位置しており、列車交換のための転轍機を持たない「棒線駅」となっていました。

東山駅は、森駅が管理する無人駅でした。駅舎や待合室といった建物は一切なく、枕木を利用した木製のデッキ式ホームのみが設置されている簡素な構造でした。ホームの東端には外部へ通じる階段がありましたが、駅への正式な取り付け道路はなく、利用者は国道5号線側の踏切付近から線路脇の小道を歩いて駅にたどり着く必要がありました。

信号場時代の遺構としては、2002年（平成14年）時点では、加速線として使われた築堤が高低差を持って駅の南側に残っており、それに続くコンクリート製の橋台が東側の道路を跨いでいました。道路を越えた丘陵部分にも築堤としてその痕跡が見られました。下り列車の待避線に使われた築堤も、本線に沿って残存していました。

廃止後、駅として機能していたホームは撤去されています。

利用状況

近年の利用状況は極めて低調でした。JR北海道が実施した2011年から2015年（平成23年から平成27年）にかけての乗降人員調査（毎年11月の特定日に実施）では、5年間の平均が「1名以下」という結果でした。このような利用状況が、駅の廃止に繋がる大きな要因となりました。

駅周辺

東山駅の駅施設自体や駅に近接した場所に建物はありませんでしたが、周辺には民家が点在しています。駅の東側には国道5号線が通っており、その沿道には函館バスの「東山」停留所が設置されています。

駅名の由来

駅名の「東山」は、所在地である地区名に由来しています。

隣の駅

北海道旅客鉄道（JR北海道）
■函館本線（廃止時点）

駒ヶ岳駅 (H65) - 東山駅 (H64) - 姫川駅 (H63)

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