東急1000系電車

東急1000系電車：多様な路線で活躍したステンレス車両

東急1000系電車は、1988年12月26日に営業運転を開始した東急電鉄の通勤形電車です。ここでは、1000系から派生した1500番台についても解説します。

概要

1000系は、東横線での営団日比谷線乗り入れ用初代7000系と、池上線7200系の置き換えを目的として製造されました。1988年から1992年にかけて、東横線向け8両編成8本、東横線・目蒲線兼用4両編成4本、池上線向け3両編成11本の計113両が東急車輛製造で製造されました。

9000系の設計を基本としており、車体構造や機器類は共通化され、部品の削減、乗務員の運転操作性、検修作業の効率化が図られました。機器構成の違いから、東横線・目蒲線兼用の4両編成は「1000N系」、池上線向けは「1000N'系」とも呼ばれます。

車体

9000系と同様にステンレス製の軽量車体ですが、日比谷線との乗り入れ協定により車体長が18m級となったため、窓配置は7000系・7200系と同様、先頭車がdD3D3D1、中間車が1D3D3D1となっています。前面形状は9000系と同様に、非常口を左側にオフセットした左右非対称構造で、非常口の車内側には地下区間用の非常用梯子が設置されています。

東横線用編成では、4号車の妻面と床下に日比谷線内で使用する誘導無線用アンテナが設置されています。また、7号車の下り方妻面には、当初日比谷線内で使用する列車運行番号表示用レスポンスブロックが設置されていました。レスポンスブロックは後に撤去されましたが、その名残で窓は二段式の開閉可能構造となっています。東横線用は後に全車に車両間転落防止幌が設置されました。

主要機器

主電動機は、1C4M車・1C8M車の区別なくTKM-88（130kW）が使用されています。東横線投入分は、旧営団との乗り入れ協定を満たすため、編成中の中間車は全て電動車とされ、MT比は6M2Tと高くなっています。制御装置は、1基で2両分8個の主電動機を制御する1C8M制御方式が採用されました。

主回路は9000系と同様のVVVFインバータ制御で、GTOサイリスタ素子を用いた東洋電機製造製のものが搭載されています。この制御装置は世界初のヒートパイプ冷却式8個モータ一括制御VVVFインバータであり、後に各地の電車へと普及しました。

池上線投入分は、2M1Tの3両編成で新製され、冗長性確保のため各電動車に制御装置を搭載する1C4M仕様となりました。デハ1200形は1C4M制御専用設計の制御装置が採用され、小型軽量化が図られています。

台車は9000系と同様のボルスタレス台車ですが、床面高さを低くするため設計変更が行われたTS-1006（電動車）とTS-1007（付随車）となっています。補助電源装置は9000系と同一の120kVAの静止形インバータ、パンタグラフは剛体架線対応形のPT44-S-D-M形です。

冷房装置は東芝製のインバータ制御による能力可変式で、除湿運転も可能です。1005Fまではレシプロ式圧縮機、1006F以降は低騒音形のスクロール式圧縮機を使用しています。

保安装置

東横線用は、当初日比谷線用のWS-ATC装置と東急ATS装置が搭載されていましたが、後に東急東横線の新ATC、日比谷線の新CS-ATCに対応しました。池上線・東急多摩川線用は東急形ATSとTASCを搭載しています。

車内

内張りは9000系と同一の模様の化粧板、床材は茶色でキーストンプレートの塗り床です。座席は全てロングシートで、9人掛け座席間には仕切り板が設けられています。網棚はドア部端まで延長され、物が載せやすくなっています。池上線用の1000N'系では、新製時より座席仕切部にスタンションポールが設置され、自動放送装置にメニュー放送が追加されました。

2000年までに池上線用1000N'系では一部座席を撤去して車椅子スペースを設置、東横線所属車も2004年までに2・7号車に車椅子スペースが設置されました。

運転台

運転台は9000系とほぼ同じ配置で、配色は車内がアイボリー、計器盤はワインレッド調または茶色です。主幹制御器はデッドマン装置付きのT字型ワンハンドル式です。池上線用ではワンマン運転用にドア開閉ボタン、車内・車外放送用マイクなどが追加されています。

編成

1000系は製造時期により、1次車から5次車に分類されます。特記事項を有する編成として、昭和64年中に落成した1002F、伊賀鉄道へ譲渡された1006F、目蒲線に転用された1010F - 1013F、上田電鉄へ譲渡された1014F - 1018Fなどがあります。

1000系1500番台

東横線と日比谷線の相互直通運転を終了した編成は、改造工事を受け池上線・東急多摩川線に転用されました。改造により、車体カラー帯が変更され、戸袋部には三日月のマークが追加されました。行先表示器はフルカラーLED式に取り替えられ、車内も7000系に準じた内装に一新されました。

車体装飾

過去には、東横線と日比谷線との直通運転開始40周年記念、池上線全線開通80周年記念のステッカーが貼り付けられました。また、1017Fは旧東急標準ツートンカラーに、1013Fは初代3000系風の「緑の電車」ラッピングになりました。1522Fは「いけたまハッピートレイン」ラッピングとして運転を開始しました。

運用

現在は池上線・東急多摩川線で3両編成16本が運用されています。東横線・日比谷線での運用は終了しました。

他社への譲渡

廃車後、多数の車両が上田電鉄、伊賀鉄道、一畑電車、福島交通などへ譲渡され、第二の人生を歩んでいます。

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