東急3300系電車

東急3300系電車：鋼体化改造が生んだ個性派通勤電車

東急3300系電車は、東京急行電鉄（現・東急電鉄）が戦前に導入した通勤形電車です。その出自は、老朽化した木造電車の車体を鋼製に載せ替える「鋼体化改造」にあります。ここでは、3300系の誕生から、その後の活躍、そして地方私鉄への譲渡後の足跡を詳細に解説します。

誕生の背景：木造電車の鋼体化

3300系のルーツは、目黒蒲田電鉄（目蒲電鉄）のモハ150形と、東京横浜電鉄のサハ1形に遡ります。

モハ150形: 目蒲電鉄が1930年代後半に、老朽化したモハ20形・モハ30形（2代目）の車体を鋼体化した両運転台の制御電動車です。
サハ1形: モハ150形に先駆け、1936年にモハ30形36 - 39の車体を鋼体化した付随車で、東急初の付随車でした。

これらの種車となったのは、目蒲電鉄および池上電気鉄道が、大正末期の路線延伸・輸送力強化のために導入した、旧国鉄（鉄道省）の払い下げ車両でした。しかし、これらの払い下げ車両の多くは短期間で他社へ譲渡されたため、モハ150形・サハ1形の種車としては少数派となりました。

車両構造：旧台枠の利用と特徴的な外観

3300系（デハ3300形）は、鋼体化の際に旧台枠を流用したため、全長15.9mと小型で、オーバーハングも短いという特徴がありました。平妻形のシンプルな外観を持ち、扉幅は1mでした。

1942年の大東急発足時に全車が東急に引き継がれ、デハ3300形3301 - 3311となりました。一部車両は戦災で被災し、電装解除されてクハ3230形となりましたが、後にサハ3360形として復旧しました。

1955年には片運転台化、連結面側の貫通化が行われました。また、低出力のため全電動車の3両編成を組むこととなり、中間に入った車両は前面も貫通化されました。この3両編成は池上線で運用され、旧型車の中では加速が抜群に良かったとされています。

地方私鉄への譲渡と第二の人生

3300系の廃車は1975年から始まり、その大半が地方私鉄へ譲渡されました。

京福電気鉄道（現・えちぜん鉄道）: 3306 - 3309がモハ281形として譲渡され、2両編成で活躍しました。
福島交通: 3301・3304・3305がデハ3300形として譲渡され、東急時代同様の3両編成でラッシュ時に使用されました。
* 上田交通: 3310がデハ3300形として譲渡され、両運転台化されましたが、単行で使用されることは稀でした。

サハ3350形も、1965年に全車が上田丸子電鉄へ譲渡されました。一部車両は伊予鉄道へ譲渡され、サハ500形として活躍しました。

まとめ：個性的な鋼体化電車、3300系

東急3300系電車は、木造電車の鋼体化改造という特殊な経緯を持ち、その短い車体や独特の外観から、鉄道ファンに愛された車両です。地方私鉄へ譲渡された後も、それぞれの地で活躍し、その生涯を終えました。3300系は、日本の鉄道史における鋼体化改造の貴重な事例として、記憶されるべき存在でしょう。

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