東方老

東方老の生涯と軍歴

東方老（とうほう ろう、生年不詳 - 556年）は、中国の北魏末から北斉にかけて活躍した著名な軍人です。本貫は安徳郡鬲県で、代々貧しい家計に生まれ育ちました。

幼少期からの成長

幼少期から貧しい家庭環境にあった東方老は、成長するにつれてその身長が7尺（約210cm）に達し、並外れた膂力も手に入れました。しかし、その若い頃は暴力的で無頼な性格で、軽薄かつ陰険な同輩と結託し、地域の盗賊団に加わる道を選びました。このような行動は、彼が故郷にとっての大きな悩みの種となっていました。

軍人としての台頭

北魏の末期には、それに伴う兵乱が発生しました。この混乱に乗じて、東方老は高昂の指揮の下で自身の部隊を率いるようになります。普泰元年（531年）には、高歓が起兵すると、彼もまた征討に参加し、その戦功により殿中将軍の地位を獲得します。

その後、彼は平遠将軍に昇進し、魯陽郡の太守に任じられるなど、次第にその名声を上げていきました。後には南益州刺史に就任し、さらには宜陽郡太守を兼任することになります。彼はこのようにして数年間にわたって少数民族や西魏に隣接する2つの郡の太守としての経験を積み上げていきました。

戦場での活躍

東方老は、攻城戦や野戦において、自ら兵士の最前線に立って戦う姿勢がありました。特に際立ったのは、少人数であっても大軍を相手に奮闘し、勇敢に戦ったことです。そのため、西魏の軍隊からも恐れられ、敬遠される存在となりました。

北斉の成立

天保元年（550年）、北斉が建国されると、東方老は陽平県伯の査定を受け、南兗州刺史に昇進します。しかし、その後の戦闘では苦戦を強いられることも重なります。特に石泉で西魏の陳忻との戦では屈辱的な敗北を喫しました。

天保4年（553年）には、郭元建が合肥に派遣され、東方老は邢杲遠や歩大汗薩などと連携して戦力を増強しました。

最期の戦い

天保7年（556年）3月、東方老は蕭軌、李希光、裴英起、王敬宝らとともに長江を渡り、さらに柵口へと進軍しました。しかし、そこで梁の帳内の盪主、黄叢に迎撃され、敗北を喫し、前線の艦船を焼かれるという苦い経験をすることになります。その後、彼は蕪湖で軍を再編成し、5月には秣陵故城に到達し石頭城を襲撃して攻め落としました。

しかし、6月に入ると、蕭軌たちと協力して鍾山で陳霸先率いる梁軍と戦った際に、長雨に見舞われ、ついに敗北。そして捕らえられ、命を落とす結果となりました。彼の戦歴は、勇猛果敢な軍人として名を馳せた一方で、戦乱の厳しさを物語るものでもありました。

脚注

- 伝記資料: 『北斉書』巻21 列伝第13, 『北史』巻31 列伝第19 などがある。
- 参考文献: 氣賀澤保規『中国史書入門 現代語訳北斉書』勉誠出版、2021年他。

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