東洋チャンピオンスカウト

TBSテレビの前身であるラジオ東京テレビ時代の1955年6月10日に放送を開始した「東洋チャンピオンスカウト」は、日本のテレビジョン放送黎明期から長きにわたり、多くのボクシングファンに愛されたプロボクシング中継番組です。極東ボクシングクラブとの緊密なタイアップにより制作・放送され、1969年3月27日まで、実に678回にわたって放送が続けられました。

番組名に含まれる「東洋」は、東洋太平洋ボクシング連盟（当時の名称は東洋ボクシング連盟）のタイトルを指すものではなく、当時の冠協賛スポンサーであった東洋工業株式会社（現在のマツダ株式会社）に由来するものです。このため、番組名と地域タイトルとの混同がしばしば見られましたが、番組の命名理由は純粋に企業名によるものでした。主要スポンサーであった東洋工業に加え、後にモービル石油株式会社（現在のENEOS株式会社の一部）もスポンサーとして名を連ねています。

放送開始当初、番組は毎週木曜日の21時30分から23時00分までの90分という、当時としては非常に長い放送枠を持っていました。しかし、番組後期には放送時間が短縮され、木曜日の21時30分から22時15分までの45分枠での放送となりました。

「東洋チャンピオンスカウト」の特筆すべき点の一つは、単なる試合中継にとどまらず、番組内で「ボクシング教室」といった企画を実施していたことです。この企画からは、後に世界チャンピオンとなる沼田義明氏をはじめとする、多くの才能あるボクサーが輩出されており、選手の育成・発掘にも貢献した番組としての側面を持っていました。

番組の解説陣には、ボクシング界の権威である郡司信夫氏や、日本人初の世界チャンピオンである白井義男氏といった著名人が名を連ね、深い知識と洞察で試合を解説しました。実況アナウンサーも、渡辺謙太郎氏、山田二郎氏、吉川久夫氏、岡部達氏、藤田和弘氏ら、TBS（旧ラジオ東京テレビ）のベテランアナウンサー陣が担当し、臨場感あふれる実況で視聴者を引き込みました。

制作局であるTBSテレビを中心に、北海道放送、岩手放送、東北放送、山形放送、福島テレビ、新潟放送、北陸放送、信越放送、静岡放送、中部日本放送、朝日放送、山陰放送、山陽放送、中国放送、RKB毎日放送、長崎放送、熊本放送、大分放送、宮崎放送、南日本放送、琉球放送など、全国の多くの地方局にネットされ、全国のボクシングファンに親しまれました。

1969年3月27日をもって「東洋チャンピオンスカウト」としての放送は終了しましたが、プロボクシング中継の歴史は途絶えませんでした。その翌週、1969年4月3日からは番組名を「ボクシング中継」と改め、放送枠を木曜日の22時15分から23時00分に移動して継続されました。この改題後の番組は、1970年3月26日まで約1年間放送が続けられています。

番組の歴史を伝える貴重な記録として、2001年に発刊された『TBS50年史』に付属するDVDには、第244回放送分として行われたファイティング原田氏対ジョー・メデル氏の世界戦が、番組のオープニングタイトルと共に収録されています。これは、当時の番組の雰囲気や熱気を現代に伝える貴重な映像資料となっています。

日本のプロボクシング中継番組としては、後年TBSで放送された「ガッツファイティング」などが知られていますが、「東洋チャンピオンスカウト」の終了後、極東プロモーションはテレビ朝日と提携し、「エキサイトボクシング」という別のボクシング中継番組を開始しています。

もう一度検索