東洋大橋

東洋大橋：マツダの心臓部を繋ぐ架け橋

広島県広島市南区に位置する東洋大橋は、自動車メーカーであるマツダの心臓部を繋ぐ重要な役割を担う橋です。一見すると普通の橋に見えますが、その歴史や機能、そして周辺環境には、マツダの歴史と広島の産業発展が深く刻まれています。

マツダの成長を支える物流ルート

東洋大橋は、猿猴川に架かるマツダ構内の私道橋です。1965年10月に開通したこの橋は、かつての社名「東洋工業」に由来して名付けられました。当時、マツダの本社は猿猴川の東岸、工場は西岸の宇品にありました。増加する車両の移動を円滑にするため、そして、1960年代のモータリゼーションの進展に伴い増大した乗用車の生産に対応するため、広島県による埋立地造成と、その上に建設された宇品工場（現在のU1工場）へのアクセス確保が不可欠でした。このニーズに応える形で、本社と宇品工場を結ぶ専用道路が建設され、その要として東洋大橋が架けられたのです。

東洋大橋はマツダ専用の自動車専用道路であり、一般車両は通行できません。しかし、社内通勤バスや業務バス、物流トラック、工事車両、取引先業者の車両、マツダ社用車、そして完成したばかりの新車など、様々な車両が日々行き交っています。1日あたりの通行台数は約12,000台にも上り、マツダの生産活動における重要な物流ルートとしての役割を担っていることがわかります。

周辺環境と歴史

東洋大橋は、猿猴川上流の黄金橋（国道2号線）、下流の仁保ジャンクション、広島呉道路広島大橋、広島南道路海田大橋といった主要道路と繋がる重要な位置に存在します。かつては、橋の下に広島呉道路仁保インターチェンジがありましたが、広島高速2号線（府中仁保道路）の開通に伴い2010年に廃止されました。この歴史的変遷も、東洋大橋周辺の交通事情の変化を物語っています。

一般開放とアクセス

通常はマツダ関係者のみが通行可能な東洋大橋ですが、例外もあります。マツダミュージアムを訪れる際には、本社で入館手続きをした後、構内専用バスで東洋大橋を渡ってミュージアムに向かいます。また、マツダが毎年開催する社内駅伝大会では、一般参加者もこの橋を渡る機会があります。これらの機会を通じて、一般の人々も東洋大橋の存在と役割を知り、マツダの歴史の一端に触れることができるのです。

東洋大橋の技術と設計

東洋大橋の諸元は、その規模と技術の高さを示しています。河川橋部と陸橋部の合計で約500mの長さを誇り、河川橋部には7径間鋼合成I桁橋、3径間連続鋼箱桁橋、単純鋼箱桁橋といった複雑な構造が採用されています。三菱重工業と片山鉄工所が施工を担当したこの橋は、当時の最先端技術の粋を集めて建設されたと言えるでしょう。

結び

東洋大橋は、単なる橋というだけでなく、マツダの歴史、広島の産業発展、そして最新の技術を凝縮した象徴的な存在です。これからも、マツダの生産活動の中核を担い、広島の街並みに溶け込む、重要なインフラとしてその役割を果たし続けることでしょう。

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