東港海軍航空隊

東港海軍航空隊（第八五一海軍航空隊）

東港海軍航空隊は、日本海軍が太平洋戦争中に運用した飛行艇部隊の一つです。1940年11月15日に開隊し、当初は横浜海軍航空隊（浜空）に次ぐ第二の飛行艇部隊として、南シナ海方面の偵察や哨戒活動を担いました。

沿革

開隊と初期

開隊は、南シナ海方面の偵察能力強化を目的とした④計画に基づき、台湾の高雄市南郊の東港鎮に建設されました。浜空から要員が分派され、大潭（大鵬湾潟湖）を浚渫して駐機プールが整備されました。

1940年11月15日: 開隊と同時に第二十一航空戦隊に編入、横空から8機を割譲。
1941年1月15日: 二一航戦が第十一航空艦隊に転籍し、飛行艇16機に増強。
1941年11月8日: 開戦に備えパラオ諸島に進出、飛行艇24機に増強（九七式飛行艇）。
1941年12月22日: ダバオに進出、蘭印作戦に従事。
1941年12月31日: 小型水上機母艦ヘロンに対し雷爆撃を実施するも、小破にとどまり1機を損失。

南方作戦とソロモン戦線

太平洋戦争開戦後、東港海軍航空隊は南方作戦に深く関与しました。

1942年1月18日: セレベス島北部ケマに進出。
1942年2月11日: アンボン進出。
1942年2月25日: チモール島クーパン進出。
1942年3月10日: ペナン、12日アンダマン諸島ポートブレアに進出。ベンガル湾方面の哨戒に従事。
1942年4月1日: 第十四航空隊編制のため8機供出、最終便2機が全損。
1942年4月10日: 二一航戦が南西方面艦隊直卒に転籍、二式水上戦闘機36機を追加。
1942年5月: アリューシャン列島攻略作戦に4機派遣。
1942年7月5日: キスカ島に水上戦闘機6機派遣。
1942年8月5日: 水上戦闘機隊を第五航空隊として分離編制。
1942年9月2日: ラバウルおよびショートランドに進出、ソロモン諸島の戦いに従事。
1942年11月1日: 第八五一海軍航空隊に改称。

戦局の悪化と終戦

戦局が悪化する中で、東港海軍航空隊（第八五一海軍航空隊）は、戦力の立て直しと哨戒活動に従事しました。

1943年2月20日: ショートランドから東港に転進、戦力回復を図る（定数：飛行艇16機、実数：九七式飛行艇10機、二式飛行艇4機）。
1943年5月: シンガポールおよびポートブレアに進出、マレー半島周辺で哨戒活動に従事。この頃に全機が二式飛行艇に切り替わる。
1943年9月1日: 第二十八航空戦隊に転籍。
1943年9月20日: 二八航戦が第十三航空艦隊に転籍。
1944年3月から5月: 一部がサイパン・ダバオ方面に派遣。
1944年3月31日: 海軍乙事件が発生。古賀峯一司令長官を乗せた1番機（851空機）が行方不明、古賀長官は殉職。福留繁参謀長を乗せた2番機（802空機）は不時着水し、福留参謀長は捕虜となる。
1944年9月: 東港に転進。
1944年9月20日: 解隊、801空に併合。飛行艇の供給が止まり、航空要員の捻出が必要になったため用途廃止。

終戦後

終戦後、東港基地は台湾政府によって軍用地として活用されましたが、後に民間に開放され、大鵬湾国際サーキットなどの施設が建設され、リゾート地へと変貌を遂げています。

主力機種

九七式飛行艇：開戦時の主力飛行艇
二式飛行艇：戦争後期の主力飛行艇
二式水上戦闘機：アリューシャン進出時の護衛戦闘機

歴代司令

宮崎重敏 大佐：1940年11月15日 - 1941年9月25日
三浦艦三 中佐：1941年9月25日 -
和田三郎：1942年12月22日 -
三田国雄：1944年7月10日 - 1944年9月20日解隊

脚注

参考文献

『日本海軍編制事典』（芙蓉書房出版　2003年）
『航空隊戦史』（新人物往来社　2001年）
『日本海軍航空史2』（時事通信社　1969年）
『戦史叢書　海軍航空概史』（朝雲新聞社　1976年）
『戦史叢書　南東方面海軍作戦2』（朝雲新聞社　1975年）
『戦史叢書　比島・マレー方面海軍進攻作戦』（朝雲新聞社　1966年）
『戦史叢書　南西方面海軍作戦 第二段作戦以降』（朝雲新聞社　1972年）
『海軍水雷史』（海軍水雷史刊行会　1979年）
『連合艦隊海空戦戦闘詳報別巻1』（アテネ書房　1996年）
『飛行隊長が語る勝者の条件』（光人社　1999年）
日辻常雄『最後の飛行艇』（朝日ソノラマ　1994年）（原著　1983年）

関連項目

* 大日本帝国海軍航空隊一覧

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