東禅寺 (東京都港区)

東禅寺（とうぜんじ）

東禅寺は、東京都港区高輪に位置する臨済宗妙心寺派の寺院であり、その格式は別格本山とされています。正式には「海上禅林佛日山東禅興聖禅寺」と称します。江戸時代には「江戸四箇寺」の一つとして、重要な役割を果たしました。寺の名前は、創建者である日向飫肥藩主、伊東祐慶の戒名に由来しています。

歴史

東禅寺は、慶長14年（1609年）に、伊東祐慶が嶺南崇六を招いて開山し、当初は赤坂に創建されました。その後、寛永13年（1636年）に現在の高輪の地に移転しました。東京湾に面した立地から「海上禅林」とも呼ばれ、美しい景観を誇っていました。

幕末の安政年間（1855年 - 1860年）には、東禅寺は西洋人の宿舎として利用されるようになります。特に安政6年（1859年）には、日本で最初のイギリス公使館が置かれ、初代公使のラザフォード・オールコックが駐在しました。しかし、その裏で悲劇も起こっています。

安政7年（1860年）1月には、オールコックの通訳であった小林伝吉が、寺の門前で2人の侍によって殺害されるという事件が発生しました。さらに文久元年（1861年）には、攘夷派の常陸水戸藩浪士による襲撃事件（第一次東禅寺事件）も発生しました。オールコックは難を逃れましたが、書記官らが負傷し、双方に死傷者が出ました。翌年には、警備にあたっていた信濃松本藩士が襲撃され、イギリス人水兵2名が殺害される（第二次東禅寺事件）など、攘夷運動の舞台となりました。

これらの事件により、東禅寺は「穢れた寺」という不名誉なレッテルを貼られるようになり、檀家であった有力大名が次々と離れていきました。経済的な基盤を失った東禅寺は、一時的に衰退を余儀なくされました。

境内

現在、東禅寺の境内は国の史跡に指定されており、歴史的な価値が高く評価されています。

著名人の墓

東禅寺には、以下の著名人の墓所があります。関係者以外の見学は受け付けていません。

田村建顕
伊達秀宗
但木土佐
大槻玄沢


また、東禅寺を菩提寺としていた主な大名家は以下の通りです。

日向飫肥藩伊東家
陸奥仙台藩伊達家
伊予宇和島藩伊達家
伊予吉田藩伊達家
備前岡山藩池田家
備前赤穂藩池田家
備前鴨方藩池田家
備前生坂藩池田家
信濃高島藩諏訪家
近江大溝藩分部氏
美濃加納藩松平家
大和柳本藩織田家
豊後臼杵藩稲葉家
豊後佐伯藩毛利家

これらのうち、明治以降も墓所が現存するのは、吉田藩、鴨方藩、臼杵藩、佐伯藩です。

交通アクセス

JR高輪ゲートウェイ駅
都営浅草線泉岳寺駅
JR品川駅

脚注

参考文献

『大君の都』上・中・下（ラザフォード・オールコック、岩波文庫、1962年）
『一外交官の見た明治維新』上・下（アーネスト・サトウ、岩波文庫、1960年）

外部リンク

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