杵埼型給糧艦

杵埼型給糧艦

杵埼型給糧艦（きねさきがたきゅうりょうかん）は、日本海軍が運用した給糧艦の一群で、同型艦は4隻存在しました。この艦は、戦時中に冷凍食料や生鮮品の供給を行うために設計され、多様な運用が求められました。

計画と建造

1938年10月の商議において、中国での戦闘に関連した第3次戦備促進に伴い、小型冷凍船2隻の補充が要求されました。この要望に応じて、昭和14年度の臨時軍事費が承認され、補充用に1隻あたり1,574,000円、合計で3,147,000円が予算として設定されました。その後の比較検討の結果、一隻は艦型を拡大し、投資効果の高い中型冷凍船として建造されることとなりました。これが「杵埼」及び他の同型艦の起源です。

中型冷凍船として設計された「公称第4006号」は、1939年に建造され、1940年に雑役船として竣工、すぐに「南進」と改名されました。この艦は、小型冷凍船に比べて約2倍の糧食を搭載できる能力があり、その後の世情を考慮し、追加で3隻の建造が決定しました。

艦型と設計

杵埼型給糧艦は、冷凍食品や生鮮品の輸送に特化した艦型を持っており、遠洋漁船タイプで船体が設計されています。船体は逓信省の鋼船構造規定に準拠しており、一層甲板型の設計で、船首楼と船橋楼を備えています。内部には冷凍庫として、獣肉庫や果物庫、魚肉庫、氷庫などがあり、それらの冷凍庫の合計容積は477立方メートルにも達しました。これに加え、効率的な補給を実現するため、艦橋下には炭酸ガス式電動冷却機が2台設置されています。

この艦はまた、兵装も施されており、前部には高角砲が配置されておりました。大戦中には、装備が改良され、機銃も新しい型に替えられました。

運用

「南進」は1942年に特務艦に変更され、「杵埼」と改名されました。その後、残りの艦も特務艦として順次竣工し、大戦中は基地と艦隊間の重要な輸送を担いました。実際に「杵埼」は戦中に戦没したものの、他の艦は戦後も活躍し、復員輸送に従事しました。これらの艦はその後、連合国側に引き渡され、特に「荒埼」は日本に返還されるという運命を辿りました。

さらに1942年には計画で杵埼型の追加建造が検討されたものの、最終的には全ての建造が中止されることとなりました。仮の艦名も設定されていましたが、実現には至りませんでした。

同型艦の概要

1. 杵埼（きねさき）：1940年9月に竣工し、南進作戦に従事。戦後は護衛任務に従事するも、1945年に戦没。
2. 早埼（はやさき）：1942年8月に竣工し、ラバウル方面で糧食補給を担当。戦後は復員輸送艦となり、1947年に引き渡し。
3. 白埼（しらさき）：1943年1月竣工し、千島方面での補給に従事。戦後、編隊基地艦となり、1947年に中国に引き渡し。
4. 荒埼（あらさき）：1943年竣工でラバウル方面で糧食輸送を行い、最終的にアメリカに引き渡される。

このようにして、杵埼型給糧艦は日本海軍の艦艇として独特の役割を果たし、戦後にも影響を与えた艦船の一つとされています。

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