松井田宿

中山道 松井田宿：歴史と文化が息づく宿場町

松井田宿は、中山道六十九次のうち、江戸から数えて16番目に位置する宿場町です。現在の群馬県安中市松井田町松井田にあり、かつては旅人や物資の集散地として栄えました。

宿場の概要

宿場の範囲は、現在の群馬県道33号（旧国道18号）沿い、下町交差点付近から安中小学校南の歩道橋付近まで、約677メートルに及びます。宿場には2つの本陣があり、一つは宿場の中ほど南側に位置した金井藤右衛門の屋敷（現在の群馬県信用組合松井田支店）、もう一つは西寄り北側にあった松本駒之丞の屋敷でした。明治11年（1878年）には、金井本陣に明治天皇が宿泊されました。本陣はそれぞれ171坪と174坪の規模を持ち、脇本陣は安兵衛と徳右衛門の2軒、旅籠は25軒ありました。

米取引による繁栄

松井田宿は、富岡、下仁田、秋間などへ通じる脇往還が集まる場所であったため、米の取引で繁栄しました。月に6度市が開催され、茶、塩、絹のほか、信濃国から入山峠を越えて運び込まれた米が売買されました。各藩から持ち込まれた米は、廻米として倉賀野河岸を経由して江戸の蔵屋敷へ運ばれるほか、地元で払米として換金されました。この払米を背景に、松井田では9軒もの造酒屋が営業していました。

作家の浅田次郎は、小説『一路』の中で、松井田宿について「上州松井田はとりたてて大きな宿場ではないが、人別一千余を算える豊かな町である。いつのころからか信州諸藩の年貢米がこの宿場に集積されるようになり、一部は売却されたので、米相場が立つようになった。その利鞘によって、小さな宿場が豊かに潤ったのである」と描写しています。

五料の茶屋本陣

松井田宿と碓氷関所の間、五料村には、大名や幕府役人などの公用旅行者の休憩所として利用された五料の茶屋本陣がありました。茶屋本陣は、一般旅行者向けの茶屋に対し、特別な身分の旅行者をもてなす施設です。五料村には、「お西」と「お東」という2軒の茶屋本陣が隣接して存在し、ほぼ1年交代で五料村の名主を務めていました。

五料の茶屋本陣・お西

お西は、南西方向を正面とする切妻造二階建ての建物です。内部は土間、囲炉裏のある「チャノマ」、畳敷きの「ナカノマ」などが配置され、最も格式の高い部分には「ジョウダンノマ」が設けられています。明治11年（1878年）の明治天皇北陸東海巡幸の際には、御小休所となりました。

五料の茶屋本陣・お東

お東は、お西とほぼ同様の間取りを持つ二階建ての建物です。お西と比較して、より古い形式の間取りを伝えていると考えられています。

現在の松井田宿

現在、松井田宿には当時の面影を残す建物は多くありませんが、五料の茶屋本陣は群馬県の史跡として保存され、一般公開されています。松井田宿を訪れることで、江戸時代の宿場町の雰囲気を味わい、歴史に触れることができます。

アクセス

鉄道：JR信越本線 松井田駅下車

周辺情報

不動寺
松井田八幡宮
補陀寺・松井田城主大道寺政繁墓
* 新堀一里塚跡

松井田宿は、歴史と文化が色濃く残る魅力的な場所です。ぜひ一度、足を運んでみてください。

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