松井田町

旧松井田町は、群馬県の西部に位置していた町で、現在は安中市の一部となっています。この地は、古くから交通の要衝として栄え、その歴史と文化は深く地域に根ざしています。

地名の由来と町の概要

松井田の地名は、かつてこの地に存在した大きな松の木に由来すると伝えられています。その根元から湧き出る水が水田を潤し、豊かな実りをもたらしたことから「松、井、田」と呼ばれるようになったと言われています。

江戸時代には、中山道の宿場町として栄え、松井田宿と坂本宿の二つの宿場が置かれました。旅人や物資が行き交い、活気あふれる場所でした。

松井田八幡宮は、源頼朝が立ち寄ったという記録が残る由緒ある神社です。祭神は、誉田別命、息長足姫命、玉依姫命で、特に玉依姫命は、初代天皇である神武天皇の母親としても知られています。

能の演目「鉢木」にも、松井田庄が登場し、鎌倉幕府執権の北条時頼から佐野源左衛門に与えられた領地として描かれています。また、戦国時代から安土桃山時代にかけて活躍した武将、大道寺政繁もこの地と深い関わりがありました。NHK大河ドラマ「天地人」の原作者である火坂雅志氏の著書では、松井田城とその城代を務めた大道寺政繁の活躍が描かれています。

2006年（平成18年）に安中市と合併し、松井田町はその歴史を閉じましたが、奇岩で知られる妙義山の麓に位置し、その自然の美しさは今も人々を魅了しています。

かつて、松井田駅は勾配のある場所に位置していたため、スイッチバック式停車場でした。しかし、停車に手間がかかるため、平坦な場所に新しい松井田駅と西松井田駅が設置され、スイッチバック式の駅は廃止されました。また、横川駅と軽井沢駅の間にはアプト式線路が敷かれていましたが、新幹線の開通とともに廃線となり、現在は「めがね橋」と呼ばれる碓氷第三橋梁がその名残を伝えています。

自然と地理

松井田町は、清流碓氷川が街の近くを流れ、春には桜、秋には紅葉と、四季折々の美しい自然が楽しめます。特に、妙義山の雄大な姿は、訪れる人々を魅了します。また、旧中山道から西を望むと、秀麗な浅間山の姿を眺めることができます。

歴史

1889年（明治22年）の町村制施行により、松井田町、臼井町、坂本町、西横野村、九十九村、細野村が成立しました。その後、1954年（昭和29年）にこれらの6町村が合併し、新たな松井田町が誕生しました。その後、安中市の一部であった琵琶の窪を編入したり、安中市、甘楽郡妙義町と境界変更を行ったりしました。そして、2006年3月18日、安中市との対等合併により松井田町は消滅しました。

合併を巡っては、住民の間で賛否両論がありました。合併協議が進められた一方で、合併反対派の住民が多数を占め、合併の白紙撤回を求める運動も行われました。しかし、最終的には合併が決定し、松井田町は安中市の一部となりました。

旧松井田町役場

旧松井田町役場は、建築家・白井晟一の設計により1955年（昭和30年）に建てられた鉄筋コンクリート二階建ての建物で、「畑の中のパルテノン」と呼ばれていました。1992年まで町役場として、その後は公民館や文化財資料室として利用されていましたが、老朽化のため閉鎖されています。現在、建築家たちによる保存活動が進められています。

教育

旧松井田町には、複数の小学校と中学校がありましたが、安中市との合併に伴い、多くが安中市立の学校となっています。小学校は、松井田小学校、西横野小学校、細野小学校などがありましたが、一部は閉校となっています。中学校は、松井田北中学校、松井田南中学校、松井田東中学校、松井田西中学校がありましたが、統合や閉校が進んでいます。また、高校は群馬県立松井田高等学校があります。

交通

松井田町には、JR信越本線が通り、松井田駅、西松井田駅、横川駅があります。また、バス路線も運行しています。高速道路は上信越自動車道が通り、松井田妙義IC、碓氷軽井沢IC、横川SAがあります。

名所・旧跡・観光スポット

松井田町には、碓氷峠鉄道文化むら、碓氷峠の森公園交流館「峠の湯」、碓氷関所跡、碓氷第三橋梁、霧積温泉、坂本宿などの観光スポットがあります。

合併後

現在、旧松井田町域は安中市の一部として、地域住民の活動が行われています。合併により、旧町役場のウェブページは安中市のドメイン下に移管され、引き続き情報発信を行っています。

旧松井田町の住民の中には、現在も分立を目指す運動を続けている人々がいます。この地域は、歴史と文化、豊かな自然に恵まれ、今後もその魅力が受け継がれていくことが期待されます。

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