松平康國

松平康國

松平康國（まつだいら やすくに）は、文久3年（1863年）に長崎で生まれ、昭和20年（1945年）に没した漢学者です。字は子寛、天行・破天荒斎と号しました。早稲田大学の名誉教授であり、東洋文化学会の理事、東洋文化研究所の教頭も務めました。

生い立ちと学問

康國は、幕府旗本の大久保忠恕の子として生まれましたが、後に同じく旗本の久松松平家の養子となりました。実父の忠恕は、長崎奉行や京都町奉行、陸軍奉行並などを歴任し、幕末の動乱期に国事に尽力した人物です。康國は、このような父の気風を受け継ぎ、幼少の頃から国事に強い関心を持っていました。

学問においては、堤正勝、重野成斎、三島中洲といった著名な儒学者に師事し、文章の修行に励みました。大学予備門を修了後、ミシガン大学に留学し、政治学を深く学びました。

ジャーナリスト、教育者としての活躍

帰国後、康國は読売新聞の記者や主筆として活躍しました。その後、東京専門学校（現在の早稲田大学）に招かれ、史学と漢学を講じました。1943年に定年退職するまで、長年にわたり早稲田大学の教授として学生たちの信頼を集め、名誉教授の称号を贈られました。

早稲田大学では西洋史も担当し、また、新聞や雑誌に積極的に政治的な意見を発表するなど、その名声は高まりました。清朝末期には、李鴻章と並び称された湖広総督の張之洞に招かれ、政治顧問として数年間中国に滞在し、立憲政治の創設に尽力しました。

学術活動と晩年

1921年には東洋文化学会の創設に中心的な役割を果たし、1924年には大東文化学院の創立にも尽力しました。後に大東文化学院を辞しましたが、無窮會東洋文化研究所では教頭として、亡くなるまで教鞭を執りました。

康國は、磊落な性格で、漢学者としての風格と愛国心を持っていました。国家の大義に関わる問題には、文章や弁舌を駆使して世に訴え、正道へと導こうとする強い意志を持っていました。南北朝正閏問題では、盟友の牧野謙次郎らと共に南朝正統を主張し、政府に国定教科書の改訂を迫ったことは、その代表的な例と言えるでしょう。

康國は、大義名分に関わる問題においては、名利に心を奪われることなく、権威にも屈することなく、身命を賭して戦いました。大正から昭和にかけて、第一級の漢文章作家として高く評価されました。

著書

著書には、『韓非子国字解』、『史記国字解』、『唐宋八家文国字解』、『天行詩文鈔』、『英国史』などがあります。

外部リンク

早稲田と文学（松平康国） - 早稲田大学

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