松平康昌

松平康昌は、1893年（明治26年）に松平康荘の子として生まれました。旧福井藩主家（越前松平家）の第19代当主であり、華族として侯爵の爵位を有していました。

学歴としては、東京高等師範学校附属小学校、東京高等師範学校附属中学校を経て、1919年に京都帝国大学法学部を卒業しています。その後、明治大学や日本大学などで講師を務め、1924年にはイギリスやフランスへ留学するなど、教育者としての側面も持っていました。また、明治大学政治経済学部教授や相模女子大学学長も歴任しています。

1930年、父の死去に伴い家督を相続し、貴族院議員に就任。火曜会に所属し、1947年の貴族院廃止まで在任しました。近衛文麿、木戸幸一、原田熊雄らと共に新進華族の会合「十一会」にも参加しています。

1936年、内大臣秘書官長に就任し、1945年まで務めました。その後、宗秩寮総裁も務めています。松平康昌は昭和天皇の側近として、宮中グループの中心人物の一人でした。終戦直後には連合国軍最高司令官総司令部との接触を図り、東京裁判対策にあたっています。1946年には、松平慶民、寺崎英成、稲田周一、木下道雄とともに「五人の会」を結成し、天皇から聞き取りを行い、「昭和天皇独白録」の作成に尽力しました。

1947年、式部頭（のち式部官長）に就任し、1957年にその職務中に亡くなっています。その間、天皇の側近として、終戦工作や東京裁判対策に深く関わった人物です。

著書には『熱帯産観賞魚の飼ひ方』、『仏蘭西上院論』、『THE JAPANESE EMPEROR AND THE WAR』（直訳：『天皇と戦争』）などがあります。

松平康昌の息子である松平康愛は、1945年に戦死しており、後継者不在となったため、越前松平家は徳川達成の四男、宗紀を養子に迎えています。また、康愛の妻である久美子は、最後の将軍徳川慶喜の孫にあたり、『徳川おてんば姫』という自伝を著しています。

1934年には、旧福井藩士であった岡田啓介の組閣に際し、資金援助を行っています。晩年には、矢次一夫と対談し、その内容は『天皇・嵐の中の五十年　矢次一夫対談集』に収録されています。また、勝田龍夫の著書『「昭和」の履歴書』には、松平康昌の評伝と「天皇陛下と終戦」が収録されています。

その他、青木冨貴子の著書『昭和天皇とワシントンを結んだ男　「パケナム日記」が語る日本占領』では、松平康昌の占領期の活動が描かれています。

松平康昌は、華族、官僚、教育者として、激動の時代を生きた人物であり、特に昭和天皇の側近として、終戦工作や東京裁判対策に深く関わった人物として、その生涯は多くの研究対象となっています。

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