松平親盛

松平親盛（まつだいら ちかもり）

松平親盛は、戦国時代の武将であり、三河松平氏の一族です。三河国碧海郡福釜（現在の愛知県安城市福釜町）を本拠地とし、福釜松平家の祖となりました。系図によれば、松平長親の次男にあたります。通称は三郎次郎、右京亮。

生涯

『寛政重修諸家譜』（以下『寛政譜』）や『三河物語』によると、松平長親が庶子に所領を分与した際、親盛は福釜と東端（安城市東端町など）を与えられ、福釜城を居城としました。『寛政譜』には、天野源兵衛忠俊が付けられたと記されています。

永正12年（1515年）には、福釜村に宝泉院（浄土宗）を創建し、同寺の開基となりました。

『三河物語』によれば、甥にあたる松平清康（兄・信忠の子）が東三河を平定する際、熊谷氏の居城である宇利城（新城市中宇利）の大手門に十数名で突撃し、討ち死にを遂げました。清康は親盛の死を信定の責任とし、激怒したと伝えられています。ただし、『寛政譜』では親盛の死去年を特定せず、死因にも触れていません。また、『寛政譜』などでは宇利城攻めで戦死したのは息子の親次であるとされています（#親盛死没の諸説 参照）。

『寛政譜』によれば、親盛は宝泉院に葬られ、4代康親までが同寺を葬地としました。現在では、宝泉院の西約100mの場所にある「松平墓地（福釜城主墓域）」に、初代親盛から5代康盛までの福釜松平家歴代の墓が移されています。宝泉院には、親盛から2代親次、3代松平親俊までの肖像画が所蔵されており、安城市指定の文化財となっています（指定名は「絹本著色　福釜松平三代像」）。

親盛死没の諸説

『三河物語』には、清康が20歳の頃に尾張国岩崎（日進市岩崎）・品野（瀬戸市品野）の両郷を攻め、続いて東三河の宇利の熊谷氏を討った際、宇利城の大手攻めで一歩も引かなかった親盛が、多くの傷を負い、主従12,3名と共に討死したと記されています。清康は永正8年（1511年）生まれであるため、この戦いによる親盛の死は享禄3年（1530年）頃と推定されます。

一方、『朝野旧聞裒藁』では『西蓮寺系図附録』を根拠に、この戦いで戦死したのは親盛の嫡子である親次であるとしています。『西蓮寺系図附録』には松平親盛の享禄3年11月の証文が所載されているため、親盛の生存が窺えます。ただし、松平氏の研究者である平野明夫は、『朝野旧聞裒藁』が宇利城攻めを享禄2年としているため、整合性を考えれば宇利城攻めを享禄3年の出来事と仮定しています。

この親盛の証文について、平野明夫は紙質・字体に疑問点が多いとする安城古文書研究会編『西蓮寺文書』（安城市教育委員会、1991年）の見解を挙げています。むしろ、この時の親次の戦死を想定するならば、享年28では文亀3年（1503年）生まれとなり、延徳2年（1490年）生まれの兄・松平信忠との年齢差（14歳差）に疑問が生じると指摘しています。平野は、宇利城での戦死はやはり親盛であり、享年は28であったと結論付けています。

系譜

『寛政譜』によれば、松平長親の二男で、母は天野弾正某の娘とされています。

『寛政譜』には、実子として松平親次（三郎次郎、右京亮）が記載されています。前述の通り、『寛政譜』では宇利城で戦死した人物を親次（28歳没）としており、これに従えば親次は文亀3年（1503年）生まれ、享禄3年（1530年）没となります。『安城市史』では、親次を大永元年（1521年）生まれ、天正3年（1575年）没としています。

『寛政譜』によれば、親盛は親次の三男である盛次（金兵衛）を養子に迎えています。盛次は一時出家しましたが、後に還俗したといい、親重（金三郎、金兵衛）という子がいることが記されています。

松平家庶流の一つである西福釜松平家は、松平親忠の四男（親盛の叔父）・松平親光（甚三郎、刑部丞）を祖とし、福釜のうち西端など5か村を領したと称する家ですが、この家の伝える事績には福釜松平家との混同があると『寛永譜』の按文で指摘されています（たとえば親光が宇利城攻めで戦死しているなど）。西福釜松平家の系譜の中には、福釜松平家の親盛の末子「松平甚三郎親長」が家祖であるとするものがあるといわれています（西福釜松平家参照）。

安城市福釜町蔵前の松林山西岸寺（浄土真宗大谷派）は延徳元年（1489年）創建とされていますが、寺伝によれば、この寺の開基とされる「松平玄番」は親盛の庶子であるとされています。玄番が乳母に伴われて寺に住み込み、後に親盛が寺を「西岸寺」と命名し、玄番を開基住職とするよう命じたといいます。同寺の過去帳には、開基「清秀院殿釈了玄」、俗名「松平玄番」、天文16年（1547年）11月26日と記されているといいます。

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