松本君平

松本君平（まつもと くんぺい）

松本君平は、明治3年4月10日（1870年5月10日）に静岡県で生まれ、昭和19年（1944年）7月28日に亡くなった、ジャーナリスト、政治家、教育者、そして思想家として多岐にわたる分野で活躍した人物です。文学博士の学位を持ち、衆議院議員も務めました。

生い立ちと初期の教育

松本君平は、遠江国小笠郡中内田村（現在の静岡県菊川市）で、初代村長を務めた松本丑太郎の次男として生まれました。幼名は貞次郎といいました。母は木佐森茂助の三女である幸です。彼は、岡田淡山の私塾である冀北学舎で国学、漢学、英語を3年間学び、その後、東京へ遊学しました。1887年（明治20年）8月31日に名を「君平」と改名しています。

家督と留学

1890年（明治23年）9月11日に、兄の栄太郎が廃嫡されたため、同月17日、松浦五平治の養子となっていた兄に代わり、松本君平が家督を継ぐことになりました。その後、彼はアメリカに留学し、ペンシルベニア大学で経済財政学を学び、さらにブラウン大学大学院に進んで文学博士の学位を取得しました。留学はアメリカにとどまらず、イギリスやフランスにも渡り、見識を広げました。その後、アメリカのニューヨーク・トリビューン紙で記者として活動しました。

ジャーナリスト、教育者としての活動

1896年（明治29年）に帰国した松本君平は、東京日日新聞の記者、東京新聞の主筆としてジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせました。また、政治雑誌『大日本』を創刊し、1898年（明治31年）には東京政治学校を開校するなど、教育者としても活動しました。

政界への進出

1904年（明治37年）3月、第9回衆議院議員総選挙で静岡県静岡市区から出馬し、当選を果たし政界入りしました。立憲政友会に所属し、その後も第10回、第14回から第16回総選挙まで合計5回の当選を重ねました。議員在任中には、普通選挙法案や婦人参政権法案を提出するなど、先進的な政治思想を持っていました。

国際的な活動

松本君平は国際的な活動も積極的に行いました。1908年（明治41年）には清に渡り、翌1909年（明治42年）には天津で英字新聞『チャイナ・タイムス』と週刊誌『チャイナ・トリビューン』を創刊しました。さらに北京では日刊紙『新支那』を発行し、支那信托公司を設立しました。広東軍政府の顧問も務めています。

その他の活動

1911年（明治44年）には、青年の精神修養を目的とした「青年教団」を静岡県に設立しました。1927年（昭和2年）4月には、田中義一内閣の海軍参与官に就任し、ジュネーブ海軍軍縮会議に派遣されました。その後、政界を引退し、青年教育に尽力しました。

死去

1944年（昭和19年）7月、静岡県浜松市で狭心症により亡くなりました。松本君平の家紋は「丸の内橘」です。

著作

松本君平は、多くの著作も残しています。

『海外製茶貿易意見』経済雑誌社、1896年
『金貨本位論』博文館、1897年
『新聞学 - 欧米新聞事業』博文館、1899年
『銀行大意』東京政治学校、1902年
『春風秋雨録』広文堂、1902年
『米風歐雲録』広文堂、1903年

家族

妻は旧土佐藩士・岡内重俊の娘「壽（ひさ）」です。妹の節子は、板垣退助伯爵の嫡男である板垣鉾太郎と婚姻しています。

関連人物

松本丑太郎（父）
板垣退助
板垣鉾太郎

参考文献

上田正昭他『日本人名大辞典』講談社、2001年
『新訂 政治家人名事典 明治～昭和』日外アソシエーツ、2003年
衆議院・参議院編『議会制度七十年史 - 衆議院議員名鑑』大蔵省印刷局、1962年
* 増田実『教育と人物』高天神城戦史研究会、1970年

松本君平は、その生涯を通じて、ジャーナリズム、政治、教育、思想の各分野で多大な貢献をし、国際的な視野を持って活躍した人物でした。

もう一度検索