松永昌博

松永昌博：騎手から調教師へ、競馬界に刻んだ足跡

松永昌博氏は、1953年鹿児島県生まれ。幼少期から小柄な体格であったことから、親戚の勧めで騎手を目指すこととなる。阪神競馬場の曽場広作厩舎に入門し、騎手候補生として厳しい修業の日々を送る。6度の騎手免許試験不合格を経験するも、諦めずに努力を続け、1977年に晴れて騎手免許を取得。22歳でのデビューは、並々ならぬ努力の賜物であったと言えるだろう。

騎手としてのキャリアは、1977年3月の初騎乗、4月2日の初勝利から始まる。同年に32勝を挙げ、関西所属新人騎手の最多勝記録を更新する快挙を成し遂げた。中央競馬関西放送記者クラブ賞を受賞するも、シーズン中の騎乗停止処分により敢闘賞となったエピソードは、彼の誠実さと向上心を感じさせる。曽場厩舎所属時代を経て、1978年からは松永善晴厩舎に移籍。後に義父となる松永善晴氏の下で研鑽を積み、1983年には結婚、婿養子となり、松永昌博と改姓した。

1986年、デビュー9年目にして、ポットテスコレディで阪神牝馬特別を制し、念願の重賞初勝利を獲得。その後も中堅騎手として活躍を続け、1991年にはナイスネイチャの主戦騎手を務めることになる。持ち前の騎乗技術とナイスネイチャとの息の合ったコンビネーションは、「善戦ホース」として多くのファンを魅了し、松永昌博氏の知名度を飛躍的に高めた。

ナイスネイチャ以外にも、トーヨーリファールやトーヨーシアトルなど、数々の名馬に騎乗し、重賞勝利を重ねた。特に1997年、トーヨーシアトルで地方交流GI競走の東京大賞典を制覇したことは、騎手生活における最大のハイライトと言えるだろう。GI級競走制覇という偉業達成は、長年の努力と実力の証である。2002年、通算5846戦544勝（うち障害3勝）、重賞25勝という輝かしい戦績を残し、騎手を引退した。

騎手引退後、松永善晴厩舎の調教助手として経験を積み、2005年に調教師免許を取得。翌2006年には栗東トレーニングセンターに厩舎を開業、新たなキャリアをスタートさせた。2006年7月、ヒカリクロメートで初勝利を挙げると、2008年にはマルカフェニックスで阪神カップを制し、調教師として初の重賞勝利を飾った。2010年には同馬でスワンステークスを制し、JRA通算100勝を達成。更には2011年、エイシンアポロンがマイルチャンピオンシップで優勝し、騎手時代を含めても初のJRA・GI級競走勝利という快挙を成し遂げた。

2024年3月、調教師を定年退職。騎手として、そして調教師として、長きに渡り競馬界に貢献した松永昌博氏の功績は、競馬史に燦然と輝くものと言えるだろう。彼の指導の下で活躍した多くの騎手や、管理した名馬たちは、彼の卓越した指導力と情熱の証である。数々の栄光と苦難を乗り越え、競馬界に大きな足跡を残した松永昌博氏のキャリアは、後進の者たちにとって、大きな刺激と勇気を与え続けるだろう。

受賞歴

中央競馬関西放送記者クラブ賞敢闘賞（1977年）

主要騎乗馬

(括弧内は松永昌博騎手騎乗時の勝利重賞競走)

ポットテスコレディ（阪神牝馬特別、京都牝馬特別）
ポットナポレオン（小倉3歳ステークス）
バンブーメモリー（スワンステークス）
オースミシャダイ（阪神大賞典）
ロングムテキ（京阪杯）
センターショウカツ（神戸新聞杯）
ナイスネイチャ（京都新聞杯、鳴尾記念、小倉記念、高松宮杯）
テンザンハゴロモ（サファイヤステークス）
トーヨーリファール（ニュージーランドトロフィー4歳ステークス、平安ステークス、マーチステークス）
アルファキュート（サファイヤステークス、中山牝馬ステークス）
テンザンユタカ（サファイヤステークス、愛知杯）
トーヨーシアトル（ウインターステークス、東京大賞典、平安ステークス、東海菊花賞）
トーヨーレインボー（シリウスステークス、中京記念）

主要管理馬

(太字はGI級競走)

マルカフェニックス（阪神カップ、スワンステークス）
エイシンボストン（東京ジャンプステークス、小倉サマージャンプ）
ゼンノパルテノン（東京スプリント）
エイシンオスマン（ニュージーランドトロフィー）
ウインバリアシオン（青葉賞、日経賞）
エイシンアポロン（富士ステークス、マイルチャンピオンシップ）
ノボリディアーナ（府中牝馬ステークス）
モルトベーネ（アンタレスステークス）
* ラプタス（黒船賞、かきつばた記念、サマーチャンピオン、兵庫ゴールドトロフィー）

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