板塔婆

板塔婆（いたとうば）とは

板塔婆（いたとうば）、または卒塔婆（そとうば）とは、故人の追善供養のために、墓所の傍らに立てる木製の細長い板のことです。故人の冥福を祈り、供養する意味合いを持ちます。

概要

卒塔婆は、梵字、名号、種字、戒名、俗名などを記した白木の板であり、サンスクリット語の stūpaに由来します。これは「仏塔」を意味し、上部が五輪塔を模した形状になっているのが特徴です。五輪とは、上から順に空、風、火、水、地の五大要素を表しています。民俗学的には、卒塔婆は霊が寄り付く対象物、つまり依り代としての意味を持つと考えられています。

卒塔婆を建立すること自体に大きな功徳があるとされ、その功徳を故人に回向することで、故人の菩提を弔います。これが「卒塔婆供養」です。通常、納骨時に最初の卒塔婆供養を行い、その後は法要の度に新しい卒塔婆を立てます。ただし、浄土真宗では板塔婆を立てる習慣はありません。

日本における卒塔婆の生産は、東京都西多摩郡が全国の60～70%を占めています。原料にはモミが使用され、当初は地元産を使用していましたが、資源の枯渇により周辺県、さらには九州や海外（ヨーロッパ、中国など）からも調達するようになりました。関西地方では、経木と呼ばれる薄く小さな板が用いられることもあります。

歴史

卒塔婆の起源は、古代インドの仏舎利塔に遡ります。釈迦の入滅後、遺骨を分骨し、各地に仏舎利塔を建立したことが始まりとされています。その後、仏教の伝播とともに、各地で多様な様式の塔が建設されるようになりました。中国では、伝統的な建築様式と融合し、独自の塔が造られ、日本でも三重塔や五重塔などが建立されました。これらの塔を簡略化し、板状にしたものが卒塔婆として、先祖供養に用いられるようになったと考えられています。

日本の卒塔婆を使った死者供養の原型として、枝葉の付いた生木を墓前に立てる「梢付塔婆」や「葉付塔婆」と呼ばれる風習があります。これらは神道の玉串の原型とも言われています。12世紀頃には、密教と真言宗の影響を受け、五輪塔を墓碑や供養塔として建立する風習が現れました。『餓鬼草紙』や『一遍聖絵』には、木製の五輪卒塔婆が多数描かれています。1186年（文治2年）に作成された卒塔婆が、伊豆の願成就院に現存しています。また、『高倉院昇霞記』には、平安時代末期には四十九日までの間、毎日墓に卒塔婆を立て続ける風習があったことが記されています。

現代における卒塔婆

現在でも、卒塔婆は仏式の葬儀や法要において重要な役割を果たしています。故人を偲び、冥福を祈るための大切な供養の形として、多くの人々に受け継がれています。地域や宗派によって卒塔婆の形状や書き入れられる文字に違いが見られることもありますが、故人を供養するという根本的な意味は変わりません。

関連項目

五輪塔
板碑
柿経
オベリスク

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