林佳世子

林佳世子：西アジア社会史における卓越した研究者

林佳世子氏は、1958年山口県生まれの日本の歴史学者です。その専門は西アジア社会史、とりわけオスマン朝史に焦点を当てた研究で知られています。現在、東京外国語大学学長、そして国立大学協会副会長という要職を歴任するなど、日本の高等教育においても重要な役割を担っています。

学術的な経歴は輝かしいものです。東京都立立川高等学校卒業後、お茶の水女子大学文教育学部に進学し、卒業後は同大学大学院人文科学研究科東洋史学専攻修士課程を修了。その後、東京大学大学院人文科学研究科東洋史学専攻博士課程に進みますが、1988年に退学。同年より東京大学東洋文化研究所助手として研究活動を開始しました。

1993年には東京外国語大学外国語学部講師に就任。その後、助教授、教授へと昇進し、2009年には大学院重点化に伴う配置換えで総合国際学研究院教授となりました。そして2019年4月、東京外国語大学学長に就任。その卓越した研究業績と指導力から、日本の高等教育機関を率いるリーダーとして活躍しています。

林氏の研究活動は、単なる学問の探求にとどまりません。数々の著書や論文を通して、オスマン朝の歴史や西アジア社会の複雑な構造を一般にも広く紹介することに貢献しています。代表的な著書としては、『オスマン帝国の時代』（山川出版社）、『興亡の世界史（10）オスマン帝国500年の平和』（講談社）、『興亡の世界史 オスマン帝国 500年の平和』（講談社学術文庫）などがあります。これらの著作は、専門家だけでなく、一般読者にも理解しやすいように書かれており、高い評価を得ています。

さらに、彼女は共編著も多く手がけており、イスラーム社会に関する幅広い研究成果を世に送り出しています。例えば、『イスラーム 書物の歴史』（名古屋大学出版会）、『記録と表象――史料が語るイスラーム世界』（東京大学出版会）、『イスラーム世界研究マニュアル』（名古屋大学出版会）、『中近世日本とオスマン朝にみる国家・社会・文書』（東洋文庫）など、多様なテーマを扱った共著は、関連分野の研究に大きな影響を与えています。2021年には『岩波講座世界歴史』にも参加し、世界史研究における貢献も示しています。

学術研究活動に加え、林氏は多くの要職を兼任しています。2019年6月には一般社団法人国立大学協会副会長に就任し、日本の高等教育政策に大きく関与。また、公益財団法人トヨタ財団評議員、文部科学省日本ユネスコ国内委員会委員なども務め、その専門知識とリーダーシップを社会貢献に活かしています。

林佳世子氏の研究と指導は、日本の歴史学、特に西アジア史研究の発展に大きく寄与しており、その功績は高く評価されています。今後、学長、副会長としての役割に加え、研究者としてさらに多くの成果を挙げることを期待されています。彼女の今後の活躍に注目が集まります。

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