岩波講座世界歴史
岩波講座世界歴史は、岩波書店が刊行している、世界史に関する専門的な叢書です。このシリーズは、原始・古代から現代に至るまでの世界の全歴史をカバーしており、歴史学の研究者や教育関係者にとって重要な資料となっています。これまでに3回にわたり同名のシリーズが刊行され、各時代を専門とする研究者たちが、それぞれの知見を盛り込んだ論文を寄稿しています。
岩波講座世界歴史は、多数の研究者が専門的な論文を執筆し、それらを時代別やテーマ別に構成した「講座もの」と呼ばれる形式の叢書です。編集委員会が各執筆者に担当を振り分け、完成した原稿を厳密にチェックした上で刊行されます。その内容は、大学レベル以上の研究者や高等学校の歴史担当教員を主な読者層として想定しており、各時代の特定のテーマに焦点を当てた概説的な論文が中心となっています。そのため、一般的な歴史概説書とは異なり、より深く、専門的な視点から歴史を学ぶことができるでしょう。
各巻は編集が完了したものから順次刊行されるため、必ずしも巻数と刊行順は一致しません。また、第1次・第2次シリーズでは、各巻の付録として、著名な研究者や文化人が執筆した小文を収録した月報が添付されています。この月報は、各巻の刊行順に番号が振られています。
1969年から1971年にかけて刊行された第1次シリーズは、全31巻（本編29巻、別巻および総目次・総索引）から構成されています。このシリーズは、岩波講座の中でも最多の刊行点数を誇ります。別巻では、「現代歴史学の課題」として、「歴史意識の展開」「歴史学の理論と方法」「日本近代史学の再検討」といったテーマが取り上げられました。
時代区分としては、古代、中世、近代、現代の4つに分けられています。古代編では、オリエント、地中海、南アジア、東アジア、内陸アジアといった各地域世界の形成が扱われ、中世編では、各地域世界の展開が論じられています。近代編では、ヨーロッパから世界に広がる近代世界の形成と展開が、現代編では、第一次世界大戦およびその後の世界情勢が分析されています。
編集委員には、荒松雄、板垣雄三、岩見宏、太田秀通、越智武臣、斉藤孝、佐伯有一、佐藤長、柴田三千雄、西嶋定生、堀米庸三、護雅夫、弓削達といった著名な研究者が名を連ねています。
1997年10月から2000年8月にかけて刊行された第2次シリーズは、全28巻および別巻から構成されています。これは岩波講座の中で2番目に多い刊行点数です。通史編（20巻）とテーマ編（7巻）の2つに分かれており、通史編では世界の各地域の各時期が割り当てられ、それぞれの論文は「構造と展開」「境域と局所」「論点と焦点」という3つの視点から分析されています。テーマ編では、特定の時代に世界的に共通して見られる事象に着目し、地域を越えた共時的な関連性を考察しています。さらに、第1巻では全体を総括する内容となっています。
第1次シリーズとは異なり、特定の時代区分は設けられていませんが、事実上、16世紀以前を11巻、16世紀以降を16巻で扱っています。また、アジアやイスラム世界の記述を増やし、西欧の記述を減らすなど、構成に大きな変更が見られます。
編集委員は、樺山紘一、川北稔、岸本美緒、斎藤修、杉山正明、鶴間和幸、福井憲彦、古田元夫、本村凌二、山内昌之といった専門家によって構成されています。
2021年10月から刊行が開始され、2023年11月に完結した第3次シリーズは、全24巻で構成されています。論文は「展望」（Perspective）、「問題群」（Inquiry）、「焦点」（Focus）という3つの区分で構成され、対象となる地域や時代の通史、問題点、個別のテーマが深く掘り下げられています。
このシリーズでは、近代以前の南北アメリカ大陸、アフリカ、太平洋地域にそれぞれ1巻が設けられ、第2次シリーズまで別々に扱われていた原始・古代から中世の西アジア（北アフリカを含む）史とヨーロッパ史を、環地中海世界として4巻にまとめられています。
編集委員は、荒川正晴、大黒俊二、小川幸司、木畑洋一、冨谷至、中野聡、永原陽子、林佳世子、弘末雅士、安村直己、吉澤誠一郎といった研究者が担当しています。
岩波講座のように、多数の研究者が論文を執筆し、世界史の全時代を網羅する形式の叢書としては、他に以下のようなものが存在します。
民主主義科学者協会歴史部会編『世界歴史講座』（全6巻、三一書房、1953-54年）
尾鍋輝彦・上原専禄・江口朴郎・山本達郎監修『世界史講座』（全8巻、東洋経済新報社、1954-56年）
* 歴史学研究会編『講座世界史』（全12巻、東京大学出版会、1995-96年）
特に、歴史学研究会が編集した『講座世界史』は、同じく歴研などが編集する『講座日本史』シリーズと対をなすものと見なされていますが、その多くは15世紀以降の時代に焦点が当てられています。
岩波講座世界歴史は、その詳細な内容と多様な視点から、世界史を深く理解するための重要なリソースと言えるでしょう。
概要
岩波講座世界歴史は、多数の研究者が専門的な論文を執筆し、それらを時代別やテーマ別に構成した「講座もの」と呼ばれる形式の叢書です。編集委員会が各執筆者に担当を振り分け、完成した原稿を厳密にチェックした上で刊行されます。その内容は、大学レベル以上の研究者や高等学校の歴史担当教員を主な読者層として想定しており、各時代の特定のテーマに焦点を当てた概説的な論文が中心となっています。そのため、一般的な歴史概説書とは異なり、より深く、専門的な視点から歴史を学ぶことができるでしょう。
各巻は編集が完了したものから順次刊行されるため、必ずしも巻数と刊行順は一致しません。また、第1次・第2次シリーズでは、各巻の付録として、著名な研究者や文化人が執筆した小文を収録した月報が添付されています。この月報は、各巻の刊行順に番号が振られています。
第1次シリーズ（1969年 - 1971年）
1969年から1971年にかけて刊行された第1次シリーズは、全31巻（本編29巻、別巻および総目次・総索引）から構成されています。このシリーズは、岩波講座の中でも最多の刊行点数を誇ります。別巻では、「現代歴史学の課題」として、「歴史意識の展開」「歴史学の理論と方法」「日本近代史学の再検討」といったテーマが取り上げられました。
時代区分としては、古代、中世、近代、現代の4つに分けられています。古代編では、オリエント、地中海、南アジア、東アジア、内陸アジアといった各地域世界の形成が扱われ、中世編では、各地域世界の展開が論じられています。近代編では、ヨーロッパから世界に広がる近代世界の形成と展開が、現代編では、第一次世界大戦およびその後の世界情勢が分析されています。
編集委員には、荒松雄、板垣雄三、岩見宏、太田秀通、越智武臣、斉藤孝、佐伯有一、佐藤長、柴田三千雄、西嶋定生、堀米庸三、護雅夫、弓削達といった著名な研究者が名を連ねています。
第2次シリーズ（1997年 - 2000年）
1997年10月から2000年8月にかけて刊行された第2次シリーズは、全28巻および別巻から構成されています。これは岩波講座の中で2番目に多い刊行点数です。通史編（20巻）とテーマ編（7巻）の2つに分かれており、通史編では世界の各地域の各時期が割り当てられ、それぞれの論文は「構造と展開」「境域と局所」「論点と焦点」という3つの視点から分析されています。テーマ編では、特定の時代に世界的に共通して見られる事象に着目し、地域を越えた共時的な関連性を考察しています。さらに、第1巻では全体を総括する内容となっています。
第1次シリーズとは異なり、特定の時代区分は設けられていませんが、事実上、16世紀以前を11巻、16世紀以降を16巻で扱っています。また、アジアやイスラム世界の記述を増やし、西欧の記述を減らすなど、構成に大きな変更が見られます。
編集委員は、樺山紘一、川北稔、岸本美緒、斎藤修、杉山正明、鶴間和幸、福井憲彦、古田元夫、本村凌二、山内昌之といった専門家によって構成されています。
第3次シリーズ（2021年 - 2023年）
2021年10月から刊行が開始され、2023年11月に完結した第3次シリーズは、全24巻で構成されています。論文は「展望」（Perspective）、「問題群」（Inquiry）、「焦点」（Focus）という3つの区分で構成され、対象となる地域や時代の通史、問題点、個別のテーマが深く掘り下げられています。
このシリーズでは、近代以前の南北アメリカ大陸、アフリカ、太平洋地域にそれぞれ1巻が設けられ、第2次シリーズまで別々に扱われていた原始・古代から中世の西アジア（北アフリカを含む）史とヨーロッパ史を、環地中海世界として4巻にまとめられています。
編集委員は、荒川正晴、大黒俊二、小川幸司、木畑洋一、冨谷至、中野聡、永原陽子、林佳世子、弘末雅士、安村直己、吉澤誠一郎といった研究者が担当しています。
類似の叢書
岩波講座のように、多数の研究者が論文を執筆し、世界史の全時代を網羅する形式の叢書としては、他に以下のようなものが存在します。
民主主義科学者協会歴史部会編『世界歴史講座』（全6巻、三一書房、1953-54年）
尾鍋輝彦・上原専禄・江口朴郎・山本達郎監修『世界史講座』（全8巻、東洋経済新報社、1954-56年）
* 歴史学研究会編『講座世界史』（全12巻、東京大学出版会、1995-96年）
特に、歴史学研究会が編集した『講座世界史』は、同じく歴研などが編集する『講座日本史』シリーズと対をなすものと見なされていますが、その多くは15世紀以降の時代に焦点が当てられています。
岩波講座世界歴史は、その詳細な内容と多様な視点から、世界史を深く理解するための重要なリソースと言えるでしょう。
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