林家花丸

林家 花丸（はやしや はなまる）

上方落語における名跡の一つ。「林家花丸」の名は、これまでに数名が襲名しており、特に当代は代数を明確に名乗っていませんが、その存在が確認されています。なお、上方・東京双方に存在する「桂花丸」という同名の名跡とは異なります。上方では初代桂花團治や三代目笑福亭枝鶴が、東京では三代目桂枝太郎（桂歌丸門下）がそれぞれ「花丸」を名乗った時期があります。

歴代の林家花丸

初代 林家 花丸

詳細な生没年は明らかではありませんが、幕末期に「花丸」という名前が文献に見られます。

二代目 林家 花丸

生没年不詳。初代林家菊丸の門下に入り、その実子として落語家となりました。落語家となる前は伊勢で料理屋を営んでいたと伝えられています。林家菊造、二代目林家小菊丸と改名を経た後、「花丸」を襲名しました。彼は二代目林家菊丸の弟にあたります。「滑稽改良噺」を得意としたという記録がある一方、人情噺にも長け、「乳貰い」は特に得意ネタとして知られていました。明治20年代から30年代にかけて、林家一門の中で中心的な存在として目覚ましい活躍を見せ、「大看板」と称されるほどでした。当時の上方落語界を牽引した七代目桂文治、三代目桂文枝、三代目桂文三といった同時代の噺家たちと肩を並べる存在でした。明治30年代末頃に亡くなったと推測されています。本名は菊本 友吉。

三代目 林家 花丸

1934年（昭和9年）9月21日生まれ。現在の存命については不明です。兵庫県の尼崎工業高校を卒業後、一度はサラリーマンとして勤めますが、落語家を志し、1957年（昭和32年）に三代目林家染丸に入門しました。入門当初は染太楼を名乗り、その後花丸を襲名します。後に四代目笑福亭枝鶴の門下に移籍し、笑福亭花丸として活動しました（このため、笑福亭仁鶴の兄弟子にあたります）。初舞台は1959年（昭和34年）の千日劇場でした。ラジオパーソナリティとしても活躍し、KBSラジオの番組「KBSワイドスコープ」を担当していました。しかし、1973年（昭和48年）3月に落語家を廃業します。その後は名古屋に拠点を移し、芸能マネージャーとして芸能界に関わり続けました。得意ネタの一つであった「相撲場風景」は、六代目笑福亭松鶴の演じ方に酷似していると評されたことがあります。三代目花丸の実父は、二代目林家染丸門下の林家うさぎ（本名：島光明）でした。三代目の本名は島 洋一です。

当代 林家 花丸

1965年（昭和40年）3月6日生まれ。兵庫県尼崎市出身。本名は船引 厚志（ふなびき あつし）。出囃子は「ダーク」を使用しています。桃山学院大学社会学部を卒業しています。

経歴としては、1991年（平成3年）11月に四代目林家染丸に入門し、「花丸」を襲名しました。師匠である四代目染丸の師匠筋にあたる二代目林家染丸が得意としていた噺『電話の散財』を受け継ぎ、自身の高座でも度々披露しています。林家一門特有の「もっちゃり」「はんなり」と評される正統派の芸風を受け継ぎつつ、古典落語の中に独自の鋭い感性から生まれるギャグを効果的に織り交ぜ、観客を爆笑させるスタイルで多くのファンを獲得しています。古典落語の確かな技術と、現代的なユーモアセンスを兼ね備えた噺家と言えるでしょう。

趣味が高じて宝塚歌劇の大ファンとしても知られており、年間40回以上観劇するほどの熱の入れようです。宝塚ファンによる宝塚歌劇風の落語会「花詩歌（はなしか）タカラヅカ」では、「天橋 満（あまはし みちる）」という芸名で立ち上げメンバーとして参加し、トップスターとして活躍しました。しかし、2017年（平成29年）の第6回公演をもって、「落語家としての活動に専念したい」との理由から、本家宝塚さながらの黒紋付きに緑の袴姿での卒業セレモニーを行い、宝塚関連の活動からは身を引きました。

また、1995年（平成7年）から1998年（平成10年）にかけて、二代目森乃福郎（当時は笑福亭福三）らが主宰した新作落語専門の落語会「新撰落語もぎた亭」にも参加していました。

評価の高い主な持ちネタとしては、『厩火事』では視線や細かい仕草によって女房の心の揺れを見事に表現し、『人情ばなし幸助餅』では登場人物の情を巧みに描き出し、観客の涙を誘います。『三十石』での舟唄の歌唱力も高く評価されています。

受賞歴

当代花丸は、その実力が各方面で認められ、数々の賞を受賞しています。

1998年 なにわ芸術祭 最優秀新人賞
1999年 大阪府知事賞受賞、大阪市長賞受賞
2010年 繁昌亭大賞爆笑賞受賞
2014年 繁昌亭大賞受賞
* 2014年 文化庁芸術祭優秀賞受賞

これらの受賞歴は、当代花丸が上方落語界において確固たる地位を築いていることを示しています。

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